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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第109回   109
「これからランチなんだが、君も一緒にどうだい?」
スネップは青年・バリーを食事に誘った。彼は笑みを浮かべると、その誘いを受けた。
ランチの間、スネップは彼の話を色々聞き出していた。年齢は24歳。イェール大学卒業真近かに、このべトナムへ志願。配属されている部隊は第4師団LRP。二人は、すぐに打ち解けた。スネップは久々に笑う。この青年の話は、ユーモアとウィットに富んでいるのだ。彼は知的で、頭の切れる青年だということを知った。
「君は、変わっている」
スネップが言う。
「スプーキー(変人)ってことですか?」
バリーがそう言うと、二人は声を出して笑った。
「いや、君は曹長の器じゃないということさ」
「どういう意味です?」
「これは私の勘だが、君はこのベトナムで納まるような男じゃない」
スネップの言葉に、バリーは笑みを浮かべた。
「貴方は、僕を買いかぶっているようだ」
スネップは、財布から自分の名刺を取り出すと、バリーの前に置いた。
「私の連絡先だ。何かあったら・・・いや、恐らく私から連絡すると思うが・・・」
名刺には「アメリカ大使館・駐在職員デイル・スネップ」とあり、彼への直通番号が記載されていた。

二人はレストラン「ゴックスーン」を出ると、「是非、もう一度会いたいね」とバリーに言い残し、スネップはその場を別れた。

レストランを出て少し歩くと、軍用ジープが真横を走り過ぎ、目の前で停まった。黒い眼帯をした迷彩服の男が、運転席に乗っている。バリーはナビシートに乗り込んだ。
「どうだ?」
葉巻をくわえたモビーディックが、煙を吐きながらバリーに言った。
「有意義なR&R(休暇)だったよ」
バリーは胸ポケットからラッキーストライクを1本取り出すと、口にくわえ火を点けた。
「奴は、俺を選ぶだろう。俺の経歴を調べ、きっと俺を“利用”してやろうと考えるはずだ」
モビーディックが笑みを浮かべる。
「だろうな。奴は、お前の背後にいる、我々の“力”が欲しい筈だ」

その連絡は、MACVを通し、すぐにバリーの下に入った。連絡元はデイル・スネップ。バリーのSOGに、カンボジアの首都・プノンペンまでの護衛任務が下される。ガーツは不審を抱いたが、今回の任務の決定権はスネップにある。彼は何も口出しは出来なかった。


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