「これからランチなんだが、君も一緒にどうだい?」 スネップは青年・バリーを食事に誘った。彼は笑みを浮かべると、その誘いを受けた。 ランチの間、スネップは彼の話を色々聞き出していた。年齢は24歳。イェール大学卒業真近かに、このべトナムへ志願。配属されている部隊は第4師団LRP。二人は、すぐに打ち解けた。スネップは久々に笑う。この青年の話は、ユーモアとウィットに富んでいるのだ。彼は知的で、頭の切れる青年だということを知った。 「君は、変わっている」 スネップが言う。 「スプーキー(変人)ってことですか?」 バリーがそう言うと、二人は声を出して笑った。 「いや、君は曹長の器じゃないということさ」 「どういう意味です?」 「これは私の勘だが、君はこのベトナムで納まるような男じゃない」 スネップの言葉に、バリーは笑みを浮かべた。 「貴方は、僕を買いかぶっているようだ」 スネップは、財布から自分の名刺を取り出すと、バリーの前に置いた。 「私の連絡先だ。何かあったら・・・いや、恐らく私から連絡すると思うが・・・」 名刺には「アメリカ大使館・駐在職員デイル・スネップ」とあり、彼への直通番号が記載されていた。
二人はレストラン「ゴックスーン」を出ると、「是非、もう一度会いたいね」とバリーに言い残し、スネップはその場を別れた。
レストランを出て少し歩くと、軍用ジープが真横を走り過ぎ、目の前で停まった。黒い眼帯をした迷彩服の男が、運転席に乗っている。バリーはナビシートに乗り込んだ。 「どうだ?」 葉巻をくわえたモビーディックが、煙を吐きながらバリーに言った。 「有意義なR&R(休暇)だったよ」 バリーは胸ポケットからラッキーストライクを1本取り出すと、口にくわえ火を点けた。 「奴は、俺を選ぶだろう。俺の経歴を調べ、きっと俺を“利用”してやろうと考えるはずだ」 モビーディックが笑みを浮かべる。 「だろうな。奴は、お前の背後にいる、我々の“力”が欲しい筈だ」
その連絡は、MACVを通し、すぐにバリーの下に入った。連絡元はデイル・スネップ。バリーのSOGに、カンボジアの首都・プノンペンまでの護衛任務が下される。ガーツは不審を抱いたが、今回の任務の決定権はスネップにある。彼は何も口出しは出来なかった。
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