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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第105回   105
LZから目的地までは、およそ半日の行程だった。その間、最年少のパワーズがCOSVNとは何かとバリーに訊ねた。「北ベトナムのペンタゴン(国防総省)のようなもんだ」と、バリーが応えていた。
353地域は北ベトナム軍の“聖域”の一つであり、15ヶ所のうちの一つに過ぎなかった。3月18日に始まった「朝食作戦」は、その後14ヶ月にわたり3630回の爆撃が行われた。「朝食」の次は「昼食」、「昼食」の後は「軽食」。「軽食」の後は「デザート」そして最後の「夕食」へと続き、この作戦は総称して「メニュー」と呼ばれた。
この爆撃が続いている最中、カンボジア国境付近では小競り合いが続いていた。バリーのSOGは、この小競り合いを避けながら、目的地へ向かう。
目的地・基地地域353に辿り着いた頃には、日が沈んでいた。この地域は殆どがジャングルの木々に覆われ、確かに上空からは確認できないほどだった。それでも、所々に爆撃の跡であるクレーターがいくつも出来ており、30tもの爆弾を落としていたが、完全な焼け野原にはなっていなかった。
少し高台から、月明かりに照らし出された風景を、バリーは双眼鏡で覗き込む。そこには木で建てられた家屋がいくつか立ち並んでいた。村のようだったが、何か雰囲気が違っている。人の気配は無いようだ。バリーは27歳のクルーエル軍曹とヘイズを斥候に就かせた。
少しして、二人が戻る。二人は立ち並ぶ家屋に、何も無いと報告した。
「確かに、一度目の爆撃で、既に後方へ移動した可能性が高い」
二人の報告に対して、バリーが応える。
「じゃあ、他の地域を偵察した方がいいんじゃないのか?」
クルーエル軍曹が言った。
「いや。夜明けを待って細部までチェックする。移動は、それからだ」
バリーのSOGは、その場で野営に入った。みな、音を立てないように細心の注意を払いながら、交代で休みを取った。バリーは家屋群をずっと見張り続けていたが、人の気配は皆無だった。
翌朝、空が白み始め、チームは村に入った。河のほとりにある家屋から、一棟ずつ確認していく。爆撃によって破壊されていた部分もあったが、人の気配は全く無かった。
村の中心に入るが、武器や弾丸さえも発見できなかった。
「やっぱり、ここには何もないか・・・」
隣にいたパワーズが呟く。しかし、バリーはこの村に、違和感を覚えていた。
「サージ(曹長)、どうかしたのか?」
後ろに立っていたクルーエルが、バリーに問いかける。彼は、その場で立ち止まる。村の中心に立っていた家屋で、何かを感じ取った。
「人間がいる・・・」
バリーがそう言うと、クルーエル、パワーズ、ヘイズ、ホアのメンバーに緊張が走った。バリーはチームを左右に分け、村の中心にあった家屋の前の遮蔽物に身を隠した。手で「侵入する」の合図を出した瞬間、家屋の窓から機関銃の雨が降った。
「ヘイズ、奴を殺れ!」
バリーが叫ぶ。M70を背負っていたヘイズはスコープを覗き込み、窓から機関銃を撃っていた兵士の頭を撃ち抜いた。
「援護しろ!」
バリーとクルーエルが、先陣を切って家屋に走った。中から、さらに数人の男たちが撃って来る。AK47の音だった。


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