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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第10回   10
クッキーを食べ終わると、持って来たバスケットを手に取り、獣道をさらに奥へと進み始めた。少し歩くと、後ろを歩いていたジョージが立ち止まり、バリーを呼びとめた。
「何か、聞こえるよ」
バリーも立ち止まり、耳を済ますと、甲高い少女の声が微かに聞こえた。彼はそれがすぐにアンジェリアだと分かった。
「アンだ」
振り返ると、金色の髪をなびかせながら、ぶかぶかのジーンズをはいたアンジェリアが、二人の元に走り寄って来た。彼女は息を切らせながら、冷ややかに見下ろすバリーに怒りの眼で答えた。
「ひどいわ、私も連れていって!」
「駄目だ!家に帰ってろよ!」
「どうして!?」
ぶかぶかのジーンズも、アンの顔も泥まみれになっている。マーサの花園の手入れを、手伝っていたような様相だった。
「これから秘密の"小屋"へ行くんだ。だから他の奴に知られちゃ駄目なんだ」
「知ってるわ。"プリンセス"に会いに行くんでしょう」
「どうして知ってるんだよ!?」
一週間前、バリーとジョージはミシシッピ川で傷ついた一匹のメス猫を助けていた。二人はその猫を"プリンセス"と呼び、彼らが"ハックルベリィ"を読んで造った木の上の小屋に、"プリンセス"を連れていった。バリーとジョージはこの事を二人だけの秘密にした。誰かに打ち明けることによって、"プリンセス"が再び傷付く事を恐れたのだ。
「ごめん、俺がアンに言ったんだ」
と、ジョージが上目使いでバリーに言った。

バリーは木の上の小屋にある、板を二枚貼り付けただけの小さな"テラス"で、擦り寄るプリンセスと共に、川の麓ではしゃぐアンとジョージの姿を、目で追っていた。
アンはぶかぶかのジーンズの裾を捲り上げ、ジョージと水の掛け合いをしている。とても楽しげに遊びまわるアンに、バリーは何故か孤独を感じていた。
アンジェリアは、バリーと二つ違いの妹だった。白銀に近い金色の髪に、深い碧の瞳。その瞳はまるで宝石のようだった。彼女はその姿から"天使"、アンジェリアと名付けられ、家族の愛情を一身に受けるはずだった。


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