「この家の跡継ぎとして育てるから、産めと言われた。『お腹の子は私が育てるから、アキさんはこの子の親だと名乗らないで欲しい。』と言われて目の前に500万を置かれた…。」
アキの淡々とした口調がアタシのなんともいえない感情を押し出そうとする。
「そんな…、アキ、酷すぎるよ。いくらなんでもアキと子供が可哀想だよ…。」
「『ユウキ』って名前まで決めてたんだ…。決めてたのに…。」
アキの頬から静かに涙が道を作り、落ちる…。
1本、また1本…。
「私は、もちろん反対したんだ。『自分で育てたい。』って。でも私1人の意見なんて聞き入れてくれないから、隣にいる彼に目で合図した。『助けて欲しい』って。」
アキは相変わらず淡々と話ながらも、涙は止まらなく落ちている。
「彼はもちろんアキを助けてくれたよね?」
助けてくれるはずだと…。
自分が愛している人を助けたいと思うはずだと…。
「『ママが…、そう言ってるんだから、アキちゃん…諦めて…。』とだけ彼は言った…。小さな、頼りない声で…。私、何を追いかけてたんだろうって……、何を信じてきたんだろうって……。すごく自分が惨めに感じてね……。」
そこまで話すと、アキはそれまでの口調と一変して声を上げて突然泣き出した。
(アキ…。)
アタシはただ泣き続けるアキを助手席からずっと黙って見守った。
アタシがトオルとさよならした時、アキは黙ってアタシのそばにいてくれた。
アキが自分から過去を話すのはアタシを信じてくれているからだろう。
だから、今度はアタシがアキを信じないと…。
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