「人間って誰だって欠点ってあるよな。彼は、背も高いし、スポーツも出来るし、頭もいい。けれど、人の人生がかかっている場面で欠点が出た。」
「意味分かんないよ。」
「彼は…、マザコンだったんだ…。」
「マザコン！？」
アタシにとっては意外な答えが返ってきた。
（マザコンって…。）
「ある日、彼の母親は私を家に呼び出した。とっても大きな広い家にな。私は戦うつもりだった。彼の母親に何と言われようとも『結婚する。産む。』と言うつもりだった。当然彼もそのつもりだと思ってた。」
「そりゃそうだよね。」
アキはまたタバコをふかす。
いつものメンソールのタバコ…。
やがて車は、細い道を抜け、一気に広い空間へと出てきた。
目の前には先ほど見えていた光。
揺れている点々とした小さな光。
（ここって……海。夜の…海。）
小さなさざなみが細かい光を集め、輝いている。
ここがどこだか分からない。分からないがアキはアタシを海に連れて来てくれたのが分かった。
アキは、サイドブレーキを引き、静かに車を停める。
周りを見渡しても、ただの真っ暗な広い空間。
誰もいない。
何もない。
2人を乗せた車だけがポツンと港の真ん中に停まっている。
そのまま停めた車の中でアキは話を続けた。
「彼の母親は、結婚に関しては猛反対だった。全く私の聞く耳を持たなかった。でもな…、子供に関しては産んでほしいと言われた。」
「え？」
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