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作品名:500万とメンソールと17歳のアタシ 作者:北村 裕志

第85回   85
しばらくしてアタシはアキの涙で落ち着きを取り戻し、アキに話しかけると少し手で顔を覆いながらアキは顔を上げた。


「ユウ…、その火事の…、原因はなんだったんだ?」


「…放火。」


一瞬、アキの表情が変わった。


「あの、マリって子がしたのか?」


「…分からない。」


「分からないって?」


「マリは…、マリは…、ユウの家の火事があった翌日、自宅で…自殺していた。」


「自殺!?」


「首を吊って…。だから、放火の疑いが強いのだけど、真相は分からない…。」


「そうか。」


「ユウは、お父さんやお母さんやミキの為にも、真相を知りたい。だから、ずっとずっと警察にもお願いしたんだ。『お願いだから真相を教えて下さい。』って。でも…、何も分からなかった。結局、マリが放火したのかは分からない。でもね、ユウが気を失う瞬間に見たマリの姿…、マリの家の前で見たときと同じ。顔は青ざめてた。でも少し微笑んでた。炎が激しくなるにつれて、微笑んでいたように見えた。だから…。」


「…。」


「本当は、マリだって元々大切な友達だった。マリがやったとは決め付けたくなかった。でも、でも…。あの時のマリの姿は一生忘れられない…。」


真梨子はカウンターの奥でただアタシ達の話を聞いている。






「それからユウは1人なのか?」


「叔母さんの協力もあって、高校には進学できた。これでも高校に入ったばかりの時は、中学時代の友達にも連絡とってた。火事の夜、ユウが泊まりに行った時の友達にも連絡した。連絡したけど…、誰も相手にしてくれなかった。『ごめん、約束あるから。』とか、『ユウも高校で友達作りなよ。』とか…。あの夜、『ねぇ、みんな。高校に行ってもずっと一緒だからね。』って誓い合ったのは何だったんだと思ってね。よくよく考えたら、ユウが病院にいる間も、そばにいてくれたのはトオルだけだった。友達って何なの?そんなに簡単なものなの…?だから、あの火事の真相を追究できない警察と、友達は信用しない事にした。それからかな…、次第に1人になっていったのは…。ユウには、ミキの人生も…。だから、ユウはミキの分まで“楽しみ”を探すようになった。」


「“楽しめればアタシの勝ち”ってことか。」


「そう…。」



「けど、ユウ。お前のその考えが、信用できない友達の1人を傷つけたんだよな。」


アキは、すっかり元の顔に戻っている。


元の顔に戻って冷たく言い放った。


「…そうだね。サユリだけじゃない。トオルまで傷つけたもんね…。アキ…、ユウって…、やっぱり間違っていたのかな…。」


アキは何と言うのだろう…。


アキは、ジントニックを飲み干すと、少し微笑みながら答えた。


「…間違ってはいないさ。」


「そう?」


「間違ってはいない…、でも、1人じゃないって事をもっと分かった方がいいんじゃねーか。」


「…そうだね。アキの言う通りだよ。」


アタシは涙を拭いながらもアキに向かって少し微笑んだ。


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