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500万とメンソールと17歳のアタシ
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作品名:500万とメンソールと17歳のアタシ
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作者:北村 裕志
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第81回
81
でも、中に入れない。
アタシの家なのに中に入れない。
消防署員達が、中に入らないように堰き止めている。
赤い。
そして、とても熱い…。
アタシが見た光景は悲惨だった。
家が炎に丸呑みされている。
どこからも入れない、出られないように炎がアタシの家を覆い尽くしている。
そんなアタシの家にたくさんの水が巻かれている。
アタシの家が……、アタシの家でなくなっている…。
(お父さんは!お母さんは!ミキは!!)
アタシは消防署員の手を振り払い中に入ろうとした。
「お嬢さん、危ない、下がって!」
「ユウのお父さんは…、お母さんは…。ミキは!!」
アタシは悲鳴にも近い声で消防署員に向かって叫んだ。
「どこにいるの!どこ!ユウの家族はどこにいるのーー!!」
「大丈夫、今助けに向かっているから!だから危ないから下がって!」
アタシと消防署員の必死の押し問答がしばらく続いた。
とてもじゃないが、中に入れる状態ではない。
火事にいち早く気付き、外に出れたのだろうか…。
もし、もし外に出てなかったら……。
「いやぁーー!!」
アタシは叫ぶと同時に体が軽くなった。
あっという間に頭が真っ白になった。
アタシの体はゆっくりと崩れ落ちてゆく…。
ただ…、崩れゆく体と遠のく意識の中で、アタシは人ごみの中から先日見たあの、忘れもしない形相を見つけた。
真っ赤な炎に先に見える、青白い顔…。
(マ・リ…。)
ま・さ・か…。
「ユウはそのまま気を失って、そのあとの記憶がないの。」
アタシは、オレンジジュースを軽く口に含んだ。
「…、それからどうなったんだ。」
アキは、メンソールのタバコをそっと咥えながら、アタシの話を聞いてる。
アタシが話している間、アキはただ、タバコを吸いながら何も言わず聞いていた。
「次に気が付いたのは病院の中。うっすらと目を開けると…、そこには、トオルが立っていたんだ。」
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