「今日は一段と寒いな。」
アタシは溢れる涙を拭うと、声に向かって顔を見上げた。
「電話くれてありがとな。」
アキが声を掛けてくる。
「…アキ。ユウには…、幸せって来るのかな…。」
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「実はね…、ユウには、トオルって彼氏がいたんだ。幼なじみなんだけど…、とっても弱虫で、ユウがいないと何も出来なくて…。とっても頼りないんだ…。」
「…。」
「でも…、頼りないって思っていたのは、ユウだけだったんだ…。ほんとはすごくユウの事大切にしてくれていて、すごく考えてくれていて、悩んでくれていて……。ずっと支えていたのは、ユウではなくて、トオルだったんだ……。ユウはその事に気付いたんだ。ついさっき…。ユウは大切な人をまた1人失ってしまったんだ…。」
アキは黙って聞いている。
アタシはただ喋り続けた。
喋り続けないと、また孤独感で辛くなりそうだったから…。
「ずっと1人だと思っていた。誰も、ユウなんて見てくれてないと思っていた。でも…、サユリもトオルも…、ユウの事すごく見てくれていたんだ…。その事に気付かなかったユウは…、大切な人を傷つけて…。」
溢れる涙が止まらない。
もう言葉にならない。
辛い…。
寂しい…。
もっと…、もっと…、アタシが全てを受け入れていれば…。
「私がいるじゃないか…。」
アキはポケットからメンソールのタバコを取り出し、火をつけて呟いた。
「私がいるじゃないか。ユウ。」
今のアタシには、一番欲しい一言だった。
「私が始めてユウに会った時に言った言葉、覚えているか?」
アタシはアキと初めて会ったときの事を思い出した。
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