20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:500万とメンソールと17歳のアタシ 作者:北村 裕志

第51回   51
「今日は一段と寒いな。」


アタシは溢れる涙を拭うと、声に向かって顔を見上げた。


「電話くれてありがとな。」


アキが声を掛けてくる。


「…アキ。ユウには…、幸せって来るのかな…。」


「どうしたんだ?何かあったのか?」


「実はね…、ユウには、トオルって彼氏がいたんだ。幼なじみなんだけど…、とっても弱虫で、ユウがいないと何も出来なくて…。とっても頼りないんだ…。」


「…。」


「でも…、頼りないって思っていたのは、ユウだけだったんだ…。ほんとはすごくユウの事大切にしてくれていて、すごく考えてくれていて、悩んでくれていて……。ずっと支えていたのは、ユウではなくて、トオルだったんだ……。ユウはその事に気付いたんだ。ついさっき…。ユウは大切な人をまた1人失ってしまったんだ…。」


アキは黙って聞いている。


アタシはただ喋り続けた。


喋り続けないと、また孤独感で辛くなりそうだったから…。


「ずっと1人だと思っていた。誰も、ユウなんて見てくれてないと思っていた。でも…、サユリもトオルも…、ユウの事すごく見てくれていたんだ…。その事に気付かなかったユウは…、大切な人を傷つけて…。」


溢れる涙が止まらない。


もう言葉にならない。


辛い…。


寂しい…。


もっと…、もっと…、アタシが全てを受け入れていれば…。


「私がいるじゃないか…。」


アキはポケットからメンソールのタバコを取り出し、火をつけて呟いた。


「私がいるじゃないか。ユウ。」


今のアタシには、一番欲しい一言だった。


「私が始めてユウに会った時に言った言葉、覚えているか?」


アタシはアキと初めて会ったときの事を思い出した。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 17333