「なぁ、ユウ。お前は今までにいろんな事があったんじゃねーか?でないと、1人で夜の街をふらふらする訳ねーからな。けど、誰もお前の事を認めてくれないよな。」
「お前にユウの何が分かるって言うんだ?」
「何にも分からない。けれど…、必死に生きているのは分かるよ…。」
必死に生きる?
アタシが?
毎日、夜の街を徘徊し、学校にもロクに行っていないアタシが必死に生きてるって??
…。
そうだよ。
アタシは必死に生きてるよ。
毎日が楽しいように必死に生きているよ。
悔いが残らないように必死に生きているよ。
アタシは…、生きていたいから…、生きなければならないから…、ずっとずっと必死なんだよ…。
「なぁ、ユウ。私はいつも1人なんだ。でもユウ、お前とは何だか繋がりがあるような気がするんだ。」
「繋がりって何だよ。」
「繋がりは繋がりだよ。」
そう言うと、アキはコースターの裏に持っていたボールペンで自分の携帯番号を書きとめた。
「また、いつでも電話してくれよ。」
そう言って、アキはアタシに自分の携帯番号が書かれたコースターを差し出す。
「昨日会ったばかりで、いきなりスナックに連れてくる女など信用できるか!」
「いや、信用できる。お前は私を信用する。」
「自信過剰にも程があるよね。」
アタシはグラスに半分ほど残っているオレンジジュースをそのままに、渡されたコースターを無造作にカバンの中に入れると、真梨子に向かって『ごちそうさま。』と告げ、アキをおいて先にスナックを出た。
アタシがいなくなった後の薄暗いスナックの中は、真梨子とアキの2人だけ。
「アキ、えらくあの子を気に入っているようね。」
「なんだかね。やっと、私の道しるべを見つけたような気がしてね。」
アキは、メンソールのタバコを灰皿において、ジントニックを少し口に含む。
「道しるべって?」
「私は、幼い頃に両親に捨てられてからずっと1人。それからいろいろあって18の時からまた1人。18になった時、私の人生が終った。18にならなければよかった…。」
「何言っているの?18があったから、今の24のアキがあるんじゃない。」
「どうだろうね。」
「ねえ、アキ。あんた18の時、何があったの?」
真梨子は、ずっと気になっていた。
アキの身に、どうやら18の時に何かあったのは、以前から聞いていたが、具体的には何も教えてくれないのだ。
「まぁ、いいじゃねーか。今日はありがとう。」
アキはそう言い残すと、カウンターの上にお札を置いて、また夜の街に消えていった。
|
|