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作品名:500万とメンソールと17歳のアタシ 作者:北村 裕志

第12回   12
「なぁ、ユウ。お前は今までにいろんな事があったんじゃねーか?でないと、1人で夜の街をふらふらする訳ねーからな。けど、誰もお前の事を認めてくれないよな。」


「お前にユウの何が分かるって言うんだ?」


「何にも分からない。けれど…、必死に生きているのは分かるよ…。」


必死に生きる?


アタシが?


毎日、夜の街を徘徊し、学校にもロクに行っていないアタシが必死に生きてるって??


…。


そうだよ。


アタシは必死に生きてるよ。


毎日が楽しいように必死に生きているよ。


悔いが残らないように必死に生きているよ。


アタシは…、生きていたいから…、生きなければならないから…、ずっとずっと必死なんだよ…。


「なぁ、ユウ。私はいつも1人なんだ。でもユウ、お前とは何だか繋がりがあるような気がするんだ。」


「繋がりって何だよ。」


「繋がりは繋がりだよ。」


そう言うと、アキはコースターの裏に持っていたボールペンで自分の携帯番号を書きとめた。


「また、いつでも電話してくれよ。」


そう言って、アキはアタシに自分の携帯番号が書かれたコースターを差し出す。


「昨日会ったばかりで、いきなりスナックに連れてくる女など信用できるか!」


「いや、信用できる。お前は私を信用する。」


「自信過剰にも程があるよね。」


アタシはグラスに半分ほど残っているオレンジジュースをそのままに、渡されたコースターを無造作にカバンの中に入れると、真梨子に向かって『ごちそうさま。』と告げ、アキをおいて先にスナックを出た。






アタシがいなくなった後の薄暗いスナックの中は、真梨子とアキの2人だけ。


「アキ、えらくあの子を気に入っているようね。」


「なんだかね。やっと、私の道しるべを見つけたような気がしてね。」


アキは、メンソールのタバコを灰皿において、ジントニックを少し口に含む。


「道しるべって?」


「私は、幼い頃に両親に捨てられてからずっと1人。それからいろいろあって18の時からまた1人。18になった時、私の人生が終った。18にならなければよかった…。」


「何言っているの?18があったから、今の24のアキがあるんじゃない。」


「どうだろうね。」


「ねえ、アキ。あんた18の時、何があったの?」


真梨子は、ずっと気になっていた。


アキの身に、どうやら18の時に何かあったのは、以前から聞いていたが、具体的には何も教えてくれないのだ。


「まぁ、いいじゃねーか。今日はありがとう。」


アキはそう言い残すと、カウンターの上にお札を置いて、また夜の街に消えていった。


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