アタシと真梨子に前にそびえ立つ大きな門。
「…すごい、大きい…。」
言葉が出ない。
周りは土壁に囲まれ、中の様子が全く見えない。
どこまで壁が続くのだろうと思う程の、予想以上の大きさにアタシはただただ圧倒された。
ふと見ると、その大きな門の右手には、『米倉』としっかりとした字で書かれた表札と、インターホンが付いてある。
真梨子はアタシと顔を見合わせ、お互い軽く頷くと、インターホンに近づき、そっとそのボタンを押した。
……返答が無い。
「留守なのかしら。」
真梨子は独り言のように呟くと、もう一度インターホンのボタンを押してみた。
やはり、返答が無い。
「仕方ないわね。」
真梨子は少しガッカリした顔を浮かべながらアタシを促して諦めかけて帰ろうとしたその時、門の脇の小さな扉から、和服を着た女性がゆっくりと、そして静かに現れた。
とても和服が似合うのだが、どこか影を感じさせる。
年齢は50歳過ぎといった所か…。
「あの…、どちら様でしょうか…。」
「突然申し訳ございません。米倉様のお屋敷で間違いないでしょうか…。」
「はい…。」
「私…、原田と申します。あの…、原田亜紀の母親です…。」
真梨子から“原田亜紀”という名前が出た瞬間、その女性の顔色が変わったのをアタシは見逃さなかった。
(この人が…、アキの彼氏の母親…。)
「原田…、亜紀さんて……。」
「ご存じないでしょうか…。」
「いえ……、存じております…。どうぞ……、中へ…。」
その女性は動揺を隠しきれないまま、アタシと真梨子を中へと促した。
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