「アキ、やめてよ。私は大したこと言ってないわよ。ユウちゃん、突然連れて来られたのでしょ?びっくりするわよね。アキはね、いつも1人でふらふらしていたから、たまたま私が“拾った”だけなの。ユウちゃん、あんまり気にしないでね。ジュース飲んだら適当に帰ったらいいからね。」
アタシは、このアキという女がますます分からなくなっていた。
しかし、今までアタシの周りにはいないタイプの女だ。
アタシは子供の頃は自分で言うのもなんだが、とても素直な近所でも評判の可愛い女の子だった。
だから、周りからも、『ユウちゃん、かわいいね。』などと、どうでもいい褒め言葉ばかり並べる大人しかいなかった。
そのうち、“あること”がきっかけで、学校にも行かなくなり、自然と“楽しさ”を追い求めるようになった。
“楽しさ”を求めるアタシの姿は、どうやら常識ある大人たちには、理解しにくい存在になっていたらしい。
子供の頃の『かわいい。』なんて褒め言葉を言われる事もなく、それどころか、アタシになど声を掛ける人間は次第にいなくなっていた。
強いて言うなら、アタシに話しかける人間なんて、“一応彼氏”のトオルと、クラスメートのサユリくらいだ。
しかし、アキという女は違った。
会ってまだ2日しか経っていないが、どうやら、アキは“常識ある大人”ではないらしい。
アタシと同じ目線で話をしてくれようとするのが伝わってくる。
何だか訳の分からない女だからこそ“楽しさ”を見つけられそうな気がする。
アタシのモットー、“楽しめれば、アタシの勝ち”…。
「なぁ、ユウ。お前の誕生日はいつだ?」
「2月14日。」
「バレンタインデーか。いい日に生まれたじゃねーか。そうすると、18まで、あと3ヶ月程か…。」
「なぁ、どうしてユウの誕生日をそんなに気にするんだ?」
「お前の誕生日を知りたいのは、誕生日がいつだって事ではなくて、18になるまであとどれくらい時間があるのかを知りたくてさ。」
「あんたの事は全く分かんねぇ。」
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