まだ肌寒い2月。
退院したアタシは寒さに震えながら、ある場所へと向かっていた。
夜の港でアキに馬乗りにされ首を絞められていた時…、アキは確かに泣いていた。アタシの頬に落ちてきた。
(アキが伝えたかった事…。そして…。)
大通りから細い路地に入り、さらに進んでいく。
やがて、もう見慣れた扉が目に入ってくる。
アタシは戸惑いもなくその扉を開け、中に入った。
「すみません、まだ準備中なんですが…、あら、ユウちゃん。久しぶりね。」
カウンターの奥から扉の開く音に気付き、真梨子が表に出てきた。
「真梨子さん、開店前なのにごめんなさい。」
「いえ、ユウちゃんならいいのよ。あら、その首どうしたの?」
アタシの首は退院したとはいえ、まだアキに締められた跡が残っているので、アタシは包帯を巻いたままにしていた。
「うん、ちょっとね…。」
アタシはわざと曖昧に言い、真梨子に促されるままカウンターの椅子に腰掛けた。
真梨子は、アタシにオレンジジュースを差し出すと、カウンターを挟んでアタシの向かい側に腰掛けた。
誰もいない、少し薄暗い2人だけの空間。
窓から差し込む西日だけが店内を照らしている。
|
|