中は薄暗く、カウンターとテーブルが2つかすかに見える。
客はどうやら誰もいないようだ。
「アキ、あんたが誰か連れてくるなんて、珍しいじゃない。しかも制服。この子、未成年じゃないの?」
カウンター越しに見える女がアタシに目をやり、そのままアキに話しかけている。
髪は長く、化粧は少し濃い。
見た目は40半ばくらいだろうか。
どうやら、この店のママらしい。
「お嬢さん、いつまでも入り口に突っ立ってないで、どうぞ、こちらに来て座ってくださいな。」
アタシはしばらくの間、かなり呆然と立っていたようだ。
「ここに座りなよ。」
アキもアタシに座るように促す。
アタシはカウンターの、アキが座っている席の隣りに静かに座った。
「ママ、私はいつもの。ユウには…オレンジジュースでも出してあげて。」
「はいはい。で、アキ。この子はどうしたの?」
スナックのママが興味本位でアキに尋ねる。
「この子はユウって言うんだ。いつも夜の街を1人で歩いている子なんだ。いつもって言っても私も知り合ったのが昨日なんだけどね。」
アタシには、今の状況があまり把握できない。
何故、アキはアタシをここに連れてきたのだろう…。
アタシは、何故ここにいるのだろう…。
アキをいう女は、一体アタシをどうしたいのだろう…。
「なぁ、ユウ。この人はこのスナックを1人で経営しているママの真梨子さん。人を見た目だけで判断しない、とってもまっすぐな人なんだ。私は、お前に強い目をしているって言っただろ?私も、実はこのママに強い目をしているって言われたんだ。そんな事急に言われても分からねーよな。私だって始めは分からなかった。今でもあまり分かってないかもしれないな。」
1人で話すアキを尻目に、真梨子はアキにジントニックを、アタシにオレンジジュースをそっと差し出した。
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