2層は、キラキラした光の中で水色と黄緑色が混ざりあっていた。
大広間では、子供の天使達が純白に輝く神像に神酒をかけて、ブラシでゴシゴシこすってピカビカに磨きあげていた。どれだけ神酒を注いでも一滴も浴槽にたまらずに神像が吸収してしまうのが不思議だった。この儀式を行う事で神聖な空間を保ち、2層にいる魂たちの士気を高め、向上心を継続出来るようになるのだ。 この儀式の前にちょっとしたハプニングがあった。正当防衛で殺人の罪を犯した男性の魂に天使が話しかけたら、魂は動揺して上ずった声で尋ねた。「本気で俺がこの修行をやるのかい?」天使が2度頷いた。「だが、俺は人を一人殺めている。祈ったところで虫がいい話しで、罪が消えるはずがないさ。」悩める魂は血を吐くように叫んでうなだれてしまった。天使は落ち着き払って重ねて祈るように促した。でも、男性の魂は自責の念が足かせとなっているみたいで躊躇していた。天使は、腐るな、と発破をかけた。すると、男性の目から涙がつーっと流れ落ちた。興奮して燃えていた目の中の炎が涙で消されていた。彼は床にあぐらをかいて座って心を落ち着けて祈りの修行を始めた。どんな理由があっても、人を殺めてしまった魂は、重圧と不安を拭いきれずに苦しみ続ける事になるんだ、とわたしは気の毒に感じた。
2層では、時々、精霊が飛んでいた。キラキラした光の玉がお腹に入っていて、蛍が飛んでいるような精霊もいれば、光のない精霊もいた。彼らの羽は、透明で淵に色が付いているものと、海の波を横にしたようなものと、縞模様の3種類だった。でも、蝶々のように凝った美しいデザインの模様の羽を見た事はない。ちなみに、架空の者とされていた者をわたしは2つ見たことになる。
山登りは少しずつ厳しさを増してきた。険しい山道を自分と向き合って歩いていたのが、修行で浄化されて少しずつ意識が開いてきていた。それは、わたしが持っていた小さな愛が、無限の愛へ変わろうとしていく兆しだった。おかげで、わたしの魂はほんのちょっぴり垢抜けていった。 両手の指で作る四角いファインダーから観ていた小さい景色が、大パノラマになって観られる日まであとどれくらいだろう?
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