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作品名:死んだらどうなるの? 作者:mikari

第6回   Part 6
透き通っている魂がいた。ガラス細工のように脆い印象を受けた。異様に目がキラキラ輝いて、時々、星のようにチカチカ瞬いた。そのような外見の魂が集団でいるときがあって、話しをしてみるまでちょっと怖かったけど、原爆を浴びて命を落とした可哀想な魂とわかった。
大人の魂よりも、子供の魂のほうが癒されていた。と言うのも、わたしに話しかけてきたのは、明るくて活発な印象を受ける気持ちの良い小学生の男の子で、原爆で大火傷を覆ったのに、「仕方ないよ。」とあっけらかんとしていた。今も、大人の魂はかすかに震えていると言うのに。絶対に2度と戦争をしてはいけないと強く感じた。

この頃、エマが頻繁に遊びに来た。小人は、永遠の命を授かって天国の一番下の層に住めたから修行がメインの人間よりも自由に行動していた。ある日、エマが言った。「わたし達もうすぐお別れね。」わたしが上の層に上がれるって意味だ。上に上がれるのは素直に嬉しかったけど、わたしの魂が浄化されて新しい命の欠片になっていつか地上に戻れるチャンスがあるのにエマにはないから手離しで喜べなかった。「素直に喜んでいいんだよ。」エマはわたしの心情を察して明るく言った。わたしも笑顔で言った。「ありがとう。」

わたしが下から2番目の層に上がる日が来た。毅然とした天使がわたしを迎えに来た。一瞬で2番目の層に瞬間移動していた。たちまちどんよりした鉛色に包まれた。2番目の層も平坦だった。ユニークなのは、大草原と床が繋がっていてつなぎ目が滑らかだった事。どの位置からも山が正面に見えていたのは変わらなかったけど、わたしは好んで草原にいた。修行も、食事も、眠るのも草原でした。水分は普通に取ったけど、食が少し細くなってきた。わたしも含めて、下から上がってきた魂は無口になってきて、楽しかったお茶の時間のお喋りがグンと減った。
2層目に来たばかりの頃、凛としていると感じていた空気が肌に心地よい暖かさだとわかってきたら、淡くてぼんやりした光が目に差し込んできた。
聖地での時の流れが、色々な事を微妙に変えていく。わたしの魂は、少しずつ確実に天国にいる魂らしくなって原点へと戻りつつある。気付いてなかったけど、魂としての自覚も芽生えてきていた。2層でも、心を開放する修行に精一杯努力して浄化されよう!わたしは、希望で一杯だった。


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