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作品名:死んだらどうなるの? 作者:mikari

第31回   Part31
一緒に大きくなったレガが死んだ。

あたしは、ちっとも悲しくなかったから泣かなかった。でも、さびしかった。レガに話しかけても、頭も上げてくれなくて尻尾も振らなかったんだ。全然動かないで一日中ネンネしてるだけ。だから言ったの。「レガ、ご飯、食べなさい。」でも、レガは、ご飯をもう一口も食べないしお水も飲まないし、後、お散歩にも行かなくていいんだって。ママが言った。それは、レガがぬいぐるみになったからだよね?あたしはそう思っていた。

レガが死んだ次の日、あたしは、お家からレガを出すのに反対だった。

「やだやだ。ぬいぐるみになってもいいからずっと一緒がいいよ。お家じゃないところに連れて行かれて戻ってこられないのかわいそうだから。」あたしだけ、猛反対した。「なんで、ママもパパも泣いているの?そんなに悲しいなら、レガをずっとお家においてあげようよ。」あたしは、わけがわからなかった。そしたらパパがあたしの目を覗き込むようにして言ったんだ。「死んだレガは腐っていくからそれはできないんだ。」「腐るって?」「レガがレガじゃなくなっちゃうってことよ。」ママが指先で涙を拭いて優しく答えた。「あたしがレガを腐らせないようにするから。方法を教えて。」「残念だけど誰にもそれは出来ないの。」「あたしなら出来るんじゃない?だってレガが大好きだから。どうしてママもパパも決めちゃうの?レガが可愛くないの?」あたしは必死で食い下がった。レガが車に乗せられたら一巻の終わりだから。だけど、あたしの意見は通らなくて、車でレガを火葬場に運んだ。車の中で、ぷんぷんでへそを曲げているあたしに、ママは教えてくれた。「レガはもうここにはいないのよ。レガの体からレガの魂は抜けだして、これからいくところで体を焼いてもらったら、レガはお空をぐんぐん上がっていくの。」体を焼く!?あたしはびっくりして必死に頼んだ。「レガが熱いよ。火傷しちゃうから焼かないで。」「さっきママは、レガの魂は体から抜け出しているってお話したでしょう。だからもう熱くないのよ。レガは何も感じないの。」「魂って?」「レガが体を動かせる大事なもとの部分なの。その魂っていうもとがあって、レガは体を動かしたりご飯が食べられたり出来てたの。」とママが言って、パパがもっとわかりやすく説明してくれた。「おもちゃに電池がないと、おもちゃは動かないだろう。」「なら、レガの電池を買いにいこう。」「レガは電池をもう使い切っちゃったの。」「なんで使い果たしちゃったの。じゃぁ、神様にお手紙書いて特別な電池をお空から送って貰おうよ。」「そーだよな、それが出来ればなぁ。だけど、レガの体は何をしても動かないんだよ。」「なんで?」あたしは疑問形だったけどうすうす理解し始めていた。レガは死んだから焼かれちゃうんだって。突然、あたしの目から大粒の涙が零れ落ちた。涙が出ている意識もないくらい、熱い気持ちで死に抵抗していたのに。それから、自分の耳が痛くなるくらい激しく泣きはじめた。

レガの体が焼かれている間、あたしはずっといわし雲の浮かんだ空を見ていた。それから、ワンちゃんたちのお墓を見て回った。子犬で死んじゃった可愛そうなワンちゃんがいた。病気や事故で死んだワンちゃんがいた。長生きして死んだワンちゃんがいた。骨壷に納めた時、レガのお骨を見てあたしは、「これなぁに?」質問した。「レガだよ。体を焼いたら骨が残るんだ。」「ふぅん。」

お骨になったレガは、50日間テレビのあるお部屋でみんなと一緒に暮らした。

そして、50日後にお庭に埋めた。

「レガは今日からお星様になるのよ。これからは、一番きらきら輝いている星がレガなのよ。」ママは、チャイルドシートに座ったあたしの頭を優しくなでてくれた。それから、毎晩、ご飯が終わると、ママとお散歩に行って一番明るい星を探した。あたしがきらきら星のレガを一番早く見つけることが出来た。

本当は、僕は星になったんじゃなかった。みんなに見守られて、羽の生えた天使たちに引っ張り上げられて天国の動物の世界に着いたんだ。だけど、もみはちゃんが納得してくれたなら星でもいいや。僕は心配だったの。一番の遊び相手の僕が死んじゃったら、もみはちゃんは寂しがるだろうなって。だけど、もみはちゃんの強さは僕を安心させた。パパが僕と同じ種類の犬のぬいぐるみを買ってきて、もみはちゃんはレガってつけた。僕の名前だ。もみはちゃんは僕に似たレガで毎日遊んで、寝起きも一緒だった。僕は嬉しかった。あのね、もみはちゃん、僕がいるところは、高い空にお日様があって、広い草原と綺麗な小川があるんだよ。たくさんの動物たちがバームクーヘンみたいな形でまるくなって眠ってるんだ。どうしてかっていうと、体を寄せ合って眠ると子供に帰ったみたいで安心するんだ。僕はバームクーヘンの一番外側で眠ってるよ。ここにはライオンも虎もチーターもいるんだよ。強くて早くて肉を食べていた動物が、犬と一緒に眠るんだから面白いよね。それが出来るのは、彼らがお肉を食べなくなったからなんだ。僕はまだ、もみはちゃんのお家にいたころのようにドックフードを天使から貰って食べてるけど、そのうち、牛のように、草を食むようになるんだよ。そうしたら、僕は一人で男らしく眠れるようになるんだ。天国のドックフードは、もみはちゃんのお家で食べていた味で美味しいから、ぺろりだよ。僕は眠っている時、もみはちゃんと一緒に遊んだ楽しい夢を見てるんだ。ボール遊び、楽しかったなぁ、って。

もみはちゃん、僕をいつまでも忘れないでいて。あれれ、僕のほうがもみはちゃんより寂しがってるかな?








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