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作品名:死んだらどうなるの? 作者:mikari

第3回   Part 3
次の修行に入る前に、わたしは地上に降りた。懐かしい家族や友達が歳を重ねていて驚いた。テレビを見ていた母は膝が痛むのかしきりにこすっていた。父は白髪になって天辺は地肌が見えた。色気より食い気だった妹が一皮剥けて綺麗になって、セクシーファッションに身を包んでイケメンの彼氏とデートしていた。友達は結婚して子供がいた。みんなの記憶の中でわたしは過去の人になって眠っていた。夏時間を満喫中の家族や友達にさよならして天国に戻った。

次の修行が始まった。
誕生から死ぬまでの心の動き(喜怒哀楽)を順番に全部思い出していって、心を整理していく。体験を通したものと、人から聞いた話しや映画や本などから感じたものの2種類あって、その一つ一つを浄化していく事が修行のポイントだ。ベビーのわたしは、上下に揺れながら守護天使達に導かれ、母へとたどり着いた。長い間薄暗い場所で浮遊していたわたしは落ち着かなくて激しく泣いた。母の胸に抱かれたら、カチリと場面が切り替わった。ヒーリング効果のある光の波にすっぽり包まれていたら、爽やかで最高に気分が良くなった。わたしの魂にしまいこまれていた生まれた時の記憶は白紙に戻った。
ちなみに、地道な修行だから、早い人でも80.90年はかかる。生前の性格とか物事の受け取り方で随分差が出るから、200年かかっても死ぬまでにはたどり着けない人もいる。

夕方が来て、バーベキューが始まった。「ひょっとしてリマ?」振り返って驚いた。「まさかきゅーこ?」天国で小学校低学年の時のクラスメートに再会するなんて驚きだった。「そうだよ。」「どうしてこんな所にいるの?」「こんな所ってリマもいるじゃない。」わたし達はそうだねって苦笑した。きゅーこは、小学校高学年で父親の転勤で転校して、1年間文通してそれっきりになっていた。きゅーこが死んだのは最近で白血病だったそう。「きゅーこ死んじゃったんだね。」しみじみ言ったら「リマもね。」今度は大爆笑だった。星空の下、隣同士で横になって、わたし達はいつの間にか眠っていた。鳥のモーニングコールで目が覚めた。みんなも起き出していて、テントから出てきて大草原は活気を取り戻した。天国で再会した友達を前にあんなに喜んだものの、わたし達は淡白で、「またね。」と明るく別れて、次の日は近くに座った誰かと仲良く話していた。修行が、わたし達から執着心を少しずつ取り除いて平和な心へと導いていた。


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