4層に来て、季節の移り変わりを体より心で感じるようになってきたり、時には、風や香りが写真の中から飛び出してきてリアルに肌に感じたりを繰り返していた。五感が開いたり、閉じたりしていた。
亜麻色の巻き毛の女の子が長い足を折って座って、花畑を漂っていた。ピンク色に塗られた可愛い口元が小さく動いて、呟いていた。 「欲情した体を一秒でも早く静めたくて、あたしはTシャツを脱ぎ捨てて彼のファスナーに手をかけた。重なりあい激しく体を求めあって、先にあたしがいった。彼の背中に爪をたてて二人で一緒にはてた。何度も愛し合って腰がふらふら。でも最高だった。帰る時、脱ぎ捨てたTシャツを拾ったら絨毯に何かが落ちた。ピアスだった。「何これ?」浮気の証拠を見て嫉妬の炎が燃えた。「ピアスです。」観念した時に丁寧語になるのが彼の癖だった。「いつ女を連れ込んだの?」彼は答えなかった。許せなかった。「何浮気してんの?」問いつめて、追い詰めて、メラメラして言っちゃいけない事を言ってマジな大喧嘩になった。彼は暗い瞳であたしを壁に押し付けていた。「何様?」あたしは体中の産毛が逆立つ激しい怒りにまかせて力じゃ勝てないぶん口でまかしてやろうとした。そして、二人はピアス一個で恋の崖っぷちに立って命を落とした。彼が事切れるまで何度も包丁で胸や腹を刺してからあたしは自分の胸をひとつきした。彼を自分だけのものにしたかった。死後の世界でのエンドレスラブを期待してた。大間違いだった。あたしは人殺しの罪で超ブルーな精神状態に陥り、自分の胸の苦しみで一杯一杯で、浮気相手への嫉妬どころじゃなくなった。彼氏は横たわってあたしが刺しまくった傷口を天使のかざした手のひらで癒されていた。何で心中したのかわからなくなっちゃって‘ 死に損じゃん ’って速攻後悔した。こんな高尚すぎる天国の精神世界みたいなあっさりした所じゃなくて、ダーリンにギュッと抱きしめられてイチャイチャして愛を確かめあうロマンティックな永遠の場所に行きたかったのにな。あたしのラブスピリットは自業自得の身勝手な行いで一度に滅んでしなびた。彼氏への熱い想いはメイクをおとしたみたいにさっぱりなくなった。はっとして、ちょっと待ってよ。幾らなんでもこの年で老けるのはやだ。なのに、次の瞬間にはヨッコラショの掛け声をかけてヨロヨロ移動してた。はっとして、一瞬若さは復活したけど、シャボン玉みたいに消えて保つのは無理っぽかった。腰の辺りをトントン叩いてしょぼしょぼした涙目をふいた。子供じみた動機で人を殺すと、メガ級の苦労をする羽目になるんだ。生前、関節の痛みなんか知らなかったからお婆さんになっちゃった罰ゲームは超最悪。痛い、見えにくい、足腰弱いの3重苦。修行の成果ありでいい感じになってた。」彼女はけろりとしているように見えたけど、その瞳に狂気の色はなく、魂の中で黄色い光が星のようにチカチカ瞬いて心から後悔しているとわかった。
好きな人の心を手にいれたい気持ちは少なからず誰もが持つよね。でも、自分の想いだけを貫いて人の命を奪ってしまう権利は誰にもないし、特に恋愛中は、愛は与え続けて時々サプライズなプレゼントが貰えるくらいに思ってていいのかなと思う。片思い中なら、女も男も恋の勝負をして駄目なら潔くきっぱり諦める事を進めたい。苦しい練習に耐えて甲子園の決勝にきても勝てるのは一校だけなのと同じ事。ただ言うが易し行うが難しで、人の心と同じぐらい恋心はコントロールが難しいよね。恋だって、人間関係だもんね。 そして、ストーカー行為等の発想は、正々堂々告白しても、彼女もしくは彼に受け入れられないと諦めちゃってる負け犬だって知った方がいい。
わたしは、恋愛に輝ける時期にいる人達の幸せを祈祷した。
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