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作品名:死んだらどうなるの? 作者:mikari

第2回   Part 2
キョロキョロしていたら、お茶を飲んでいるグループがいた。目が合うと、にっこり笑いかけられたから、わたしは、仲間にいれてもらうことにした。様々な人種が混じっていた。どの顔も、明るく、身振り手振りを交えて話して、ジョークで人を笑わせたりしていた。わたしにも愉快が伝染して、隣の白人女性に「あなたは、若いのになぜ天国に来たの?」と尋ねられ、うわっ、英語だ、と焦らずに落ち着いて答えられた。不思議に言葉の境界線をこえていることにびっくりした。しかも、10人いた人達みんなが気さくに話しかけてくれた。人と話したことでわたしの心は満たされ、自由と自然に浸りたい気持ちが強くなった。「リマはこれからどうするの?」韓国人の男性に聞かれて、「バスで田舎に行くつもり。」答えたら、「じゃ又後でな。」誰より先に、西部劇から飛び出してきたような格好のカウボーイハットを被った白人男性が、ビールジョッキ片手にウインクしていた。

みんなと別れて、わたしはバスに乗り継いで田舎へ。牧場では牛が草を食んでいた。ここにきた目的は乗馬。美しい毛並みの馬を見つけて、「この馬に乗ってみたい。」と念じた。馬は耳をピンとたててリラックスした状態で、「おいで。」わたしに分かる言葉で誘った。天国に来て間もないわたしは、ベテラン霊のようにスムーズに浮かんだ移動が出来なくて、自力で柵を飛び越えた。馬は、わたしが跨る間じっとしていた。馬のたてがみを優しく撫でて、艶のある体やつぶらな瞳を褒めたら、馬は耳をピクリ動かした。「ありがとう。」わたしは、満足して馬から降りた。生前、スタッフの人がリードを引いた馬にしか乗った事がないわたしが、こんな無謀なお転婆ができたのは馬に蹴られても死なない安心感があったから。(笑)

数日が経った。チョコレートに綿雲をかけたような高い山が、どの角度からも正面に見えるなだらかな大草原で過ごす時間が増えた。太陽と風は心地よい温度でわたしを包んでいた。わたしは、生前のヨチヨチ歩きの幼い姿に戻っていて、虫を観察したり、清らかな川の流れを眺めて過ごした。ティーンエイジャーになってバッチリメイクしてお洒落する事もあった。色々な年齢になって、生前の行いをそのまま繰り返すこともあれば、生きられなかった年齢を経験してもみた。自分に対して100%素直だった。夕方がきて、人が集まってきてバーベキューが始まった。大草原には動物がすむ一角があって、肉食獣が草を食んでいるところが見えたけど、野性の目は優しく穏やかになっていて、人も動物もけっして襲わなかった。わたし達人間も、歌うもの、踊るもの、マジックする人もいて、陽気にはしゃいでおなか一杯食べ、キャンプファイヤーを囲んで満天の星空を見上げ、生きている家族や恋人を思って眠った。

わたしの魂は、生前の垢がこびりついてぶ厚い層になってコロコロしていた。それで、フワリ自由に動けないのだった。わたしは生前の灰色の垢を落とす為の初歩の修行に励んだ。それが、なりたい年齢になって好きな事をする解放感に浸る事だった。素直になる事が浄化の第一歩で、何ヶ月もかかって、わたしは修行をパスした。わたしの修行ぶりを見ていた天使が判断したのだった。
でも、見た目には垢は減っていなかった。わたしの修行は、まだまだ必要という事。


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