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作品名:死んだらどうなるの? 作者:mikari

第19回   Part19
修行の合間に、透き通った風と戯れた。
サーカスの大きな輪の中でクルクル周るピエロのように回されて、わたしは眼をまわしてしまった。わたしと遊ぶのをやめた風が、他の魂と遊びだした。わたしと同じオレンジ色で、運動神経のある活発な魂だった。勢いよく回されているのに、笑って風のペースに合わせている上、風に向かって話していた。

「ママとスーパーマーケットに行った。先に走って行ってお魚のコーナーに着いて、端から端までお魚を見回してからふと上を見たら、天井に自分がいた!幽体離脱した等身大の自分と目があった。面白くて興奮した。でも、体験後に精神的にしんどい事が一杯あった。例えば、夕方、友達と公園でさよならして一人で家に帰るとき、首のない男の人が立っている所を通りすぎなきゃ帰れなくて、怖いからいつも走って帰った。それとか、部屋の本箱の上に腰から下のない男の子がいるのがいつも見えていて、気持ち悪くて自分の部屋で勉強が出来なくなった。寝るのも怖くて、部屋のドアを開けたまま眠った。でも、毎日のことだし、あんまり怖くてたまらなくなってきたから、勇気を出してママに打ち明けた。「あらそう。ママには見えないわ。」って答えだった。やっぱり、ママはあっけらかんだった。でも、ママは、わたしが怖がる気持ちは分かるって言ってくれたからほっとした。だけど、ママに打ち明けても幽霊を見る回数は減らなかった。それでも、わたしはみんなと同じように普通が絶対に良かったから、歯を食いしばって恐怖と戦った。後にも先にも、ママに幽霊の話しをしたのは1回きりで、後は口にチャックして誰にも言わなかった。
その年の冬、家族旅行で北海道のホテルに泊まった。うじゃうじゃ幽霊がいて、
幽霊ホテルみたいだった。でも、部屋のトイレを使うとき開けっ放しにしないでちゃんと閉めた。明るく楽しそうに振舞って、我慢強さだけで2晩クリアした。
それからは、幽霊なんていないんだって、毎日心の中で唱えた。ある日、幽霊は、ぼんやりした存在になってほとんど見えなくなっていた。彼氏が出来た事と関係してるみたいな。でも、気のせいかも、と思っていた。天国に来て、わたしは一人ではなく幾つかの魂の集合体で出来ていた事がわかった。その内の比率の大きい魂が見えていた者を、主の魂のわたしの目を通して見えたのだった。比率の大きい魂は、人間らしさを失っておらず、霊感が鋭くて、生前占いや霊媒師の職についていた。それで不幸な霊が声をかけてくるのだった。わたしに霊感が強く、敏感に反応する研ぎ澄まされたセンサーを持つ事が出来たのは彼らのおかげ。加えて、デリケートで臆病な性格が幽霊を見て怯えていたとわかった。ちなみに、わたしが怖い体験をしていたのは小学校の低学年の頃。一日中遊びたい盛りで本当に1週間勉強しなかったら、初めの日はちろちろした罪の意識だったのが、いきなりボーっと燃え広がって爆発寸前。消火器をかけるように慌てて勉強した。怠けた事をどれだけ反省しても、1週間遊んだ事実は変わらないし、その間、わたしの精神はふらついていたことも、首なしとかの怖い魂を見た原因のひとつだったんだ。あんなに怖がって損しちゃった。」

みんなが腰を抜かす幽霊の正体って、生前も人を悪戯で驚かすのが好きで、人の目に触れたがっている魂なんだよね。だから、お墓が草ぼうぼうにされたら気を悪くするし、悪口を言われてばかりじゃめげてひがむのは、ちっともおかしいことじゃない。そして、生前わたしも冷媒体質?と聞かれた事があることを思い出した。

わたしは、柿色の魂になる為に、浄化の修行に気合を入れた。


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