初め、グレーブルー色の霧の中に一筋の光が差していた。目をこらしていたら霧が晴れ、目映い光の中にいた。わたしの魂は咲いたばかりの花のようにオレンジ色で穏やかな風を感じた。今から、わたしは4層で修行する。
浄化の修行後、わたしと同じ色の魂を見つけた。でも、その魂は動きが少しぎこちなかった。左右・上下にゆっくり動いて、小さい子供がお遊戯しているみたいだった。突然、右を向いたり左を向いたりしだして落ち着きにかけた動きになる、そんな繰り返しだった。
「またあたしを見てるんだ?あたしがぎこちない動きのわけは、ズバリ超がつく運痴(運動音痴)なもんで。そんでもって、人間嫌いを浄化している途中だから。誰かが自分を見ているぞってゾクゾク感じたら、ガンガン右向いたり、左向いたりして視線ビームを交わしているせい。これでもあたし、苦労してやっと4層まで上がってきたんだ。生前は、ひどいシャイで自分が嫌いになっちゃったよ。自分も人間なのにどうして人間嫌いなんだろ?ってわけわかんなくって混乱しまくり。けど、きちんと我輩は人間嫌いである、の自覚背負って、コツコツ地道に自分をだましだまし生息してた。胸の真ん中じゃ、あたしは外来種か異常人間だと思い込んで悲観して凹んでた。とにかく人といると滅茶苦茶疲れた。一緒にいる人の顔色を無意識に伺って神経衰弱してたんだよね。後は、自意識過剰もかなりあった。血の繋がった妹と一緒にいるのも疲れた。妹と一緒にいて疲れた理由をとく鍵は、学生時代にあるっぽい。あたしは学校が大嫌いで、大人の言いなりにならない我侭少女だった。学問の大切さやら、球技や鉄棒とかの苦手なスポーツ全般をさせられるのも苦痛でしかなかったし、体育祭なんか、あたしは見世物じゃないんだから、あたしを見るな!って感じてた。宿題をやった事は数えるしかないし、予習・復習するのに教科書を開いたこともない。受験勉強なんかへのかっぱ。試験パスのために、数学を頑張ったくらい。けど、お母さんの事は愛してて、何であたしを産んだの?みたいな馬鹿な事は考えたこともなかった。なんかの本でその台詞を読んで馬鹿だな、コイツって思った。ズル休みに憧れて、お母さんのふりして学校に休む連絡入れたら、担任に嘘がばれてて公園で時間を潰してたあたしを怖い顔をしたお母さんが迎えに来た。担任とお母さんの連携プレイには負けた。あたしの行動が読まれてたのは悔しかったなー。数回同じ手を使ってみたけど、全部ばれて遅刻しても学校に行かされた。イイコはみんな席について先生の話しを聞いている時に、あたしが涼しい顔で悪びれずに教室に入っていってたから、授業を中断させられて、受験を控えてたクラスメートにはひんしゅくの嵐。あたしは、人の迷惑考えてなかったんだ。あたしの両親は、厳しい人たちで学問への関心がハンパじゃなく高かった。あたしが、登校拒否児童になるのを許さなかった。お父さんは、あたしよりも早く会社に行ってたから、まさかばれてると思ってなかったんだけど、お母さんは自分の手には負えないと思ったんだろう。ある晩、妹が見ている前でお父さんの雷が落ちた。「お前は学校に行ってないのか?学校にいけ!」顔をしかめて叩く真似をするお父さんが怖くて恐ろしくて、正座した膝に涙を零した。「泣くな!」お父さんは、どうしてあたしが学校に行きたくないか理由をきいてくれなかった。ただ、叱るのみ。「教科書を持って来い!」と、お父さんに言われた時は、ヤバイと青くなった。「今、どこをやってるんだ?」「さぁ。」とは答えられなくて、適当に答えた。「問題を解いてみろ。」と言われ、気が遠くなった。数学の教科書だった。問題を解けなくて、教科書の角で頭をカツンと叩かれた。あの痛さは、今も体が覚えてる。結局、学校に行きたくない理由は一度も話した事がないまま、妹の前でお母さんに、こんないじめをうけたとかポツリ愚痴ったくらい。情けなかったのは、保健の先生との相性が悪くて、保健室に逃げ込めなかったこと。狭いトイレに逃げ場所見つけてこもって、あたし、何しに学校に行ってたんだろう?結局、あたしは勉強についていかれずに落ちこぼれて、義務教育を終了した。皮肉だったのは、妹が、運動、勉強がよく出来て友達の多い優等生タイプで、先生方に評判のイイコちゃん。あたしとは違って勉強以外の事に煩わされないでまっしぐらに大学まで進んだ。あたしの立場は悪くなるばかりで、お父さんは、あたしと妹を比べてひやかした。子供時代の行いが低俗だったあたしは妹の前で頭が上がらない。ちなみに、免許を取るのに2度失敗して向いてないと悟ったあたしとは対照的に、妹は一度でパスした。姉妹関係が完全に逆転していて、先に生まれたとか後に生まれたとかって意味不明みたい。・・天国って素敵な場所だよ。子供時代に屁理屈こねて怠けた生き方を無意識に選んだんだろう?って込み上げてくる惨めな気持ちが随分癒されて、憧れている自分に近づくチャンスをも一度与えてもらった。もう、怠け心にうつつを抜かしてよそ見しないで、神の子になって浄化の修行とか諸々頑張っていくのであります。」 落ち着きのない魂が、かぐわしい香りを放った。やる時期にやる事が大切だと今のあたしはみんなに伝えたい、と、笑顔で語った。ちなみに、やるべき時に怠けていた魂は、癒されるのに時間がかかる。そして、人との交わりを避けていた魂は、精神が不安定な時期が長期に続く。
空中をクロールで泳いでいる魂がいた。50メートル泳いでターンしてまた50メートル泳ぐ事を何度も繰り返し遊んでいた。魂の色は柿色で、わたしより浄化が進んでいた。
オレンジ色が、柿色になるまでには後どれくらいの修行が必要なのかな? わたしは、祈りの修行に入った。
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