魂の動きは、陸の生き物とも、山の生き物とも、海の生き物とも違っていた。人の形をしている時は、窓から吹き込む風に揺れるレースのカーテンのよう。でも、普通に歩こうと思えば歩けた。魂の時は、フワフワ斜めや上下や左右に浮いて漂った。ちなみに、魂の大きさは、煙草の煙で作る輪を3倍にしたぐらいで、色と形も煙草の煙に似ていた。
中絶した魂が、天国に上がり癒されるまでには半永久かかる。男女間の濃厚な体の繋がりよりも、お母さんとベビーはダイレクトに繋がっていて、「いらない」と放棄されるのをなす術もなく見守り続けている。そして、どうしてぼく、又はわたしをいらないの?と、とまどったままお母さんのお腹から消されて天国に連れて行かれるのだ。天国では1層に連れてこられ、恐怖で固まったまま、他の中絶した魂と一塊になって心の激痛と悲しみの嵐の中にいる。長い時をかけて、連続した癒しの光を浴びて苦痛が溶けだしたら、天使が迎えに来て高い層に連れて行かれ、一気に上の層に連れて行かれた事で肺に空気が行渡らなくなった魂は、苦しみで暴れまわり、暴れたことでストレスがなくなって形をとどめない魂に変化した。魂に触れると水銀のように分裂した。何度も分裂して小さくなって、ミクロになって、最後は魂の中の核だけが残り、天国だけで有効の魂になって、連れてこられた層でフワフワ漂い続ける。親に見捨てられて傷ついた魂に未来はない。SEXは慎重に。
わたしは、生前に時間を巻き戻して愛をめぐる思い出を回想し、天使の力を借りて愛を脱いでいく。打ち上げ花火のように地上での愛は美しく咲いては散り、忘却の彼方へ消えた。愛が消えていく時のわたしは、高揚して魂からハートマークがほとばしっている。大好きな人の胸に飛び込む瞬間のドキドキに似ていて、ハッピーな気分で、愛しい日々よ、さようなら。
3層の霊験を高める儀式は、頭上に光の輪が浮かぶ大人の天使達がどこからともなく数名現れ、放物線を描いてきらきらした光の矢を放ち続けた。落ちてきた光の矢は、何処にも刺さらず吸い込まれて消えた。わたしの近くに飛んできた光の矢に触れたら、パウダー状のさらさらした金色の粉が指先についてたちまち消えた。光の矢は、バケツをひっくり返した雨のような勢いで降り続けて3層の聖域は燦然と輝く黄金の国のように神々しくなった。地上では観られない感動的で貴重な経験をして、わたしの目は、浄化した分だけ輝きをまして、修行した分だけ魂はピュアになった。
次回も、色々な魂たちの話よ。お楽しみに。
|
|