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作品名:Dragon Sword Saga 作者:かがみ透

第10回   誘拐事件 〜1〜
「大変よ! ケイン! カイル! 起きて! 」
 アストーレでの翌朝は、ドアが激しく叩かれる音と、クレアの緊迫した声で始まった。
 ケインは、ベッドの脇の、すぐ手の届くところにかけておいた『ドラゴン・マスター・ソード』に、手を伸ばし、宿泊部屋のドアを開ける。
 そこには、全身に緊迫感をまとったクレアがいた。
「なんだよ、朝っぱらから、うっせーなー」カイルの寝ぼけた声が、毛布の中からする。
「きゃーっ! 」クレアは、カイルのベッドの方に目をやってから、手で顔を覆った。
 欠伸(あくび)をしながら起き上がったカイルは、ケインからすると、特に変わった様子は見られなかったのだが。
「カ、カイル、あなた……寝る時、服着ないの? 」
 カイルは、眠そうな半開きの目のまま、頭をボリボリ掻いた。
「なんだよ、そんなことかよ? 俺は、寝る時は、何も身に着けない主義なんだよ。女以外はな」
 ケインも、なんだ、そんなことかと、ホッとした。
「しっかし、お前、ホントに傭兵か? いくさで奇襲にあったりしたら、どうすんだよ? 」
「そん時は、この魔法剣が教えてくれるから、いいんだよ」
 カイルが適当な言い方で答えながら、もう一度、欠伸をする。
「昨日、ここに着いたの夜中だろ? お前ら、よく起きれるな。俺は、もう少し寝かせてもらうよ」
 毛布に潜り込むカイルの背に向かって、クレアが言った。
「マリスが、いなくなっちゃったのよ! 」
「あっそ。メシでも食いに行ったんじゃないの? それか、朝稽古でもしてるとか、町をプラプラしてるとかじゃねえの? 」
 彼は、クレアの言葉にも、あまり動じる気配がない。
 ケインも、彼と同じ考えであった。いないくらいで心配になる娘ではないだろう、と。
「手紙があったのよ。私たち宛に」
 カイルは、やっと、起き上がった。

『探さないでください。
 しばらくは、戻らないと思うので、みんなは遊んでてください。
 お金は、あたしのベッドの下にあります。
 なくなったら、自分たちで稼いでください。
 よろしく。マリス』

 クレアの見せた置き手紙には、そうあった。実に、簡単極まりない文章であった。
「おっ? 一人一リブはありそうだぞ。てことは、一週間くらいは、食べていけそうだな」
 ベッドの下から、カイルが、ごそごそと、コインの入った袋を取り出す。
「マリスが戻るのも、そのくらいか、それ以上かかりそうだってことか」
 ケインが、首を捻る。
「クレア、ヴァルは何て? 」
「何も言わずに、図書館に行ったわ」
「ヴァルは、いるってことは、マリスの単独行動か」
 一人で金勘定に勤しんでいたカイルが、ご機嫌である。
「相棒のヴァルが何も言わないんだったら、放っておいていいんじゃないの? 今までも、よくあることだったのかも知れないし。遊んでていいってんだから、俺たちも勝手にしてようぜ」
 カイルに促され、クレアとケインは、腑に落ちない思いでいたが、とりあえずは朝食を摂りに、宿屋の一階へ下りた。

 宿屋の料理を、カイルは勝手に頼み、何事もなかったかのように、骨付き肉に、がっついている。
「ねえ、カイル、マリスのこと、本当に放っておくつもり? 」クレアが心配そうな顔で尋ねる。
「ああ、そのつもりだけど? 」
「心配じゃないの? 」
「あいつは、俺たちより強いんだぜ? こっちが心配して欲しいくらいだぜ」
 そのカイルのセリフに、ケインが吹き出した。
 クレアは、ますます心配な顔になった。
「だって、町にいるならともかく、森や山に入ったりしたら――ほら、もし、噂の北の森にでも行って、魔物のことでも調べていようものなら、山賊に出会うかも知れないんだし、昼間とはいえ、おそろしいわ! ヴァルドリューズさんと離れている今は、召喚魔法も使えないんだし、いくらなんでも、大勢の賊を相手に一人でなんて、無理だわ」
「そうか、クレアは、知らないんだっけ」ケインが、パンをかじろうとした手を止めた。
「マリスは、大丈夫だよ。『武遊浮術(ぶゆうじゅつ)』っていう東方の格闘技が使えるから、大柄な男たちが何人かかろうと敵じゃないさ」
「なんで、お前、そんなこと知ってるんだよ? 」カイルが怪訝そうな顔で、ケインを見る。
「アストーレに入る前に、俺とマリスとで防具屋に行っただろ? その帰りに山賊に遭って、その時知ったんだ。
 たまたま、俺もかじったことある武術なんだけどさ」
 そう言ったケインは、その後、『武遊浮術』の『愛技』をくらい、それは受け流せなかった……とまでは、
言いたくなかったので、話さなかった。
「そうそう、なんだかそういうわけで、あいつは強いんだから、放っておいて大丈夫、大丈夫! それより、
クレアは、か弱いんだから、俺たちの側を離れない方がいいぜ」
 カイルが微笑んで、片目を瞑ってみせる。
 クレアは、不安気に、それを見ていた。
「そういえば、ミュミュを知らないか? さっき呼んだけど出て来なかったんだ」
 ケインの連れである、ニンフの子供のことだ。
「さあな。なかなか可愛い顔してたけど、人間の女の子じゃなかったからなー、知ったこっちゃないね。
 まあ、例え人間だったとしても、ワガママそうだから、俺はちょっとご免被(こうむ)りたいわ」
「そんなこと、聞いてねーって」
 呆れているケインをよそに、カイルが、ツボの中のミルクを、ごくごく飲んだ。
「ワガママで悪かったね! 」
「うわーっ! 」
 噂の妖精が、カイルの目の前にいきなり現れ、カイルが椅子ごと、後退(あとずさ)った。
「ミュミュだったかしら? あなた、マリスの居場所知らない? 」
 妖精は、ぱたぱたと透明な羽を羽ばたかせて、宙に浮かびながら、まあるい目でクレアを見上げた。
「知ってるけど、教えなーい」
 一瞬、クレアの表情が引き攣(つ)った。が、すぐに、笑顔になった。
「あら、どうしてかしら? 」
「え〜? なんか、マリスに怒られそうだから」
「そんな、適当な……!」
 クレアが言いかけたのを、ケインが目で制す。
 妖精は、気にも留めない様子で、スープを飲みかけていたケインの手の上に舞い降りると、四つん這いになって、木皿の中をじっと見つめていた。
 ケインは、スプーンを持ち替え、彼女の口元へと運んでやる。
 小さな口でスープを啜(すす)る妖精の姿は、小動物を思わせ、微笑ましいものがあった。
 飲み終わると、ミュミュは、テーブルの真ん中の、籠の中の焼きパンの上に、ちょこんと腰掛ける。
「ミュミュさぁ、実は、あるヒトを探してるんだよねぇ。ケインには話したんだけどさ、『ユリウス』っていうヒトなんだ。
 ケインに付いたのも、なんだか、このヒトと一緒にいたら、ユリウスに遭える! 
 って、思ったからなんだもん。『でんせつのせんし』とユリウスは、なんだか関係があるんだって。
 そんで、マリスと、あんたたちご一行が、ケッセイされたのを見たとき、もしかしたら、ユリウスの方から、出向いてくれるんじゃないかって、強く思ったんだ〜! 」
 ミュミュは、話しているうちに、ウキウキと喜んでいた。
「そんな根拠のないこと言われてもなー。当てが外れても、俺たちは責任取れないぜ? だいたい、そいつ、何モンなんだ? 
 俺の知り合いにいたユリウスってヤツは、太ったオッサンだったぜ? まさか、そいつじゃねぇんだろ? 」
 肉の付け合わせの菜っ葉を食べているカイルの言葉に、ミュミュは、がっくりとうなだれた。
「そんなオッサンなんかじゃないよ。ユリウスは、願い事をかなえてくれるって言われてて、妖精たちのアコガレでもあるんだから。それは、それは、キレイなヒトらしいよ」
「ふうん、そうなの。人間からすると、妖精の方がキレイな気がするけど……? 」
 と、元気のなくなったミュミュに、クレアがフォローを入れる。
「……にしてもさあ、マリスたち、あいつら、変わってるよなぁ? 」
 三本目の骨付き肉に手を伸ばしたカイルは、かぶりついてから、話題を変えた。
 まだ食べるのかと、ケインもクレアも呆れたものだったが。
「俺と知り合った時から、あの二人、宿の部屋は一緒だったんだぜ? 俺だけ別室でさ。
 まあ、サイフが違うんだから当たり前だし、マリスが男装してたから、俺の目をごまかすのもあって、ヴァルと同室なんだと思ったら――女だって俺たちにバラしてからも、ヴァルとはずっと同じ部屋だろ? 
 お前らが旅に加わってからも、奴ら、相変わらず部屋は一緒で、クレアがそこに入って、俺とケインが合い部屋とは、変な分け方じゃねえか? 」
 カイルの言う通り、奇妙な部屋割りだと、ケインもクレアも思っていた。
 いつの間にか、ミュミュも聞き耳を立てていた。
「なあ、あいつら、実は、……デキてんじゃねえの? 」
 カイルが、声をひそめた。
 ケインの心臓が、どきんと鳴った気がした。
「まさか……。だったら、クレアのこと、部屋に入れないだろ? 」
 ケインも、カイルにつられて、ひそひそ声になる。
「ねえねえ、何の話? 」ミュミュがケインの肩の上に乗り、興味深々である。
「こらこら、お子ちゃまには、関係ないんだよ」
 ケインが焦って、ミュミュの顔を手で覆う。
 見えない! 聞こえない! と、ミュミュがばたばたする。
「なあ、クレア、あの二人、どんな様子なんだよ? 」
「おい、カイル、変に詮索するのは、やめとけってば」
「いいから。クレア、一緒の部屋にいて、どうなんだよ? 奴ら、イチャついてないか? 」
 カイルが、にやにやしながら尋ねる。
 クレアは、しょうもなさそうにカイルを見た。
「別に、何も。たあいもない話をしてるか――といっても、話しているのは、いつもマリスの方で、ヴァルドリューズさんは、あんまり反応ないんだけど――または、何も話さずに、眠ってしまうこともあるし……。
 ただ、ヴァルドリューズさんは、マリスより後に眠るようにしてるみたい。
 結界張ってるのかしら? って、思えるようなこともあったし。
 まるで、……『何かからマリスを護(まも)っている』かのように……? 」
 思い出しながら、クレアが打ち明けた。
「ヴァルとは『国を出た者と追われた者同士』って言ってたからな。お国のヤツだかなんかに、居場所知られたくないんじゃねぇの? 」
 カイルが、軽く言った。
「やっぱり、それが関係あるのかな? 偽名使ってるし、足が付かないように、鎧も作り替えちゃってたし、口止め料まで支払ってたし。旅の痕跡を残さないようにしてるのかな? 」
 ケインの隣で、クレアも頷いていた。
 それにしても、少々大袈裟に、皆には思えた。
 マリスほどの戦士であれば、人数いる敵でも太刀打ち出来るであろうに。
 結界を張るということは、魔物でも警戒しているのだろうか?
(或は、魔道士の敵でもいれば、別だけど……)
 と、ケインが考えていたところだった。
「ところで、クレアも、ヴァルに手ェ出されたりしてないのかよ? 」
 からかうカイルに、心の準備が間に合わなかったクレアは、一瞬遅れたが、すぐに、キッと睨みつけた。
「まあ! 何てこというのよ! ヴァルドリューズさんは、紳士的な方よ! 彼のような魔道を極めた方は、きっと、あなたのように邪(よこしま)な考えは持たないんだわ! 
 魔法を教わっている時も、眠っている時でも、いつだって、私やマリスに指一本触れてはこないんだから!」
 クレアは、師匠であるヴァルドリューズを尊敬しているらしく、侮辱したカイルを許せないようであった。
 だが、そんなことには全然構わないカイルが、ゲラゲラ笑った。
「そりゃあ、単に、お前ら『お子ちゃま』には、興味ないってことだぜ! 」
 クレアは、ますます顔を上気させ、言葉もなく怒りを表していた。
「だいたいさー、奴ら一年も一緒にいるらしいけどさ、俺が加わる前は二人でいたわけで、普通は何かあるだろ? 恋愛感情が湧くとかさ。
 だけど、マリスが、いくらあれほどの美形でもな、まだ小娘だからなぁ。俺としては、もうちょっと色気が欲しいかなぁ。ヴァルだって、きっとそうだ。だから、そんな気が起きないだけだぜ。
 なぁ、ケイン、男だったら、そう思うよな? 」
 カイルは、調子に乗りながら、ケインの肩を叩いた。
 そんなカイルを、ケインは横目で見た。
「お前は知らないだけだよ。あいつを小娘だと思って油断してると、いつか痛い目見るぞ」
 かすかに苦い笑いを浮かべたケインは、目を反らし、溜め息を吐(つ)いた。
 ヘラヘラ笑っていたカイルも、怒っていたクレアも、どこか疲れたようなケインの様子に、きょとんと顔を見合わせる。
 ミュミュは、まだケインの手の中で、ばたばたしていた。

「さて、マリスが『遊んでていい』ってんなら、俺は、遊びに行かせてもらうぜ」
 朝食をたいらげると、カイルは、宿の外に向かった。
「お前ら、どうすんだ? 」
「私は、図書館へ行ってくるわ」
「なんだよ、またヴァルんところかよ」
 カイルは、つまらなそうに、鼻を鳴らした。
「今までも、慎ましやかな巫女の生活だったんだろ? 今日くらい、パーッと遊んだって、バチは当たらないんねぇの? なあ、ケイン? 」
 大剣は部屋に置いてきていて、今はマスター・ソードだけを身に着けているケインも、カイルの意見に賛同し、クレアに頷いてみせた。
「そうだよー、今日は、アストーレ王国の祝日だよ〜。お姫様の一六歳のお誕生祝いで、国中お祭りなんだって! 豪華なパレードはあるし、お店もいっぱい出てるみたいだよ!
 ねーねー、みんなで見に行こうよー! まちの西の方にある、おっきなテントの中では、お芝居や、動物ショーが見られるんだって! マリスも、案外、それを見に行っちゃったのかもよ? 」
「なるほど。その辺の祭りとは全然ケタが違うってのかぁ! 」
 ミュミュとカイルは意気投合して、盛り上がっていた。
「それでも、やっぱり、見物する気分にはなれないわ」
 クレアの意志は、固かった。
「しょうがねえなぁ。んじゃあ、この際、野郎でもいいや。行こうぜ、ケイン! 」
「いや、俺は、万屋(よろずや)の仕事でもするから」
 カイルは、足を滑らせた。
「よりにもよって、なんだよ、お前ら、クソ真面目な! 」
 ミュミュも、肩をすくめてみせた。
「あ〜あ、ケインてば、いつもそんななんだから」
「だって、マリスが、いつ戻るかわからないだろ? それまで生活するのに一リブじゃ足りないかも知れないし。今のうちに備えておかないと」
 あんぐりと口を開けているカイルには構わず、ケインは続けた。
「それと、夜になったら、例の北の森に行ってみる。俺なりに調べてみようと思うんだ。ヴァルにも一緒に来てくれるよう、頼むつもりだ。その前に――」
 ケインが、一旦言葉を区切った。
「今、ちょっとだけ下見に行って来ようと思うんだ。昼間だから、何ともないだろうけど、道くらいは下調べしておかないと。いきなり知らない夜道は迷うからな」
「それくらいなら、私も付き合えそうだわ」
 クレアが、微笑んだ。
 あんぐりと口を開けたままだったカイルは、その上、目を白黒させながら、彼ら二人を見比べた。
「呆れた奴らだなぁ、まったく! お祭りよりも、化け物の森の下見だとぉ? 」
「ミュミュも、どうだ? 一緒に来るか? 」
 ケインに、まん丸な目を向けた妖精は、
「ううん、ミュミュ、行かない。お姫様のパレードの方が、面白そうだもん! 」
 というと、あっけなく、パッと消えてしまった。
 拍子抜けした三人であった。
「……ま、まあ、ミュミュは、楽しいことが好きだからな。はははは」
 ケインが笑いしながら、頭を掻く。
「……お前、ホントに、あの妖精に『付かれてる』のか? 」
 カイルが、横目で言った。

 それから、彼らが、町人から仕入れた情報で森に着いたのは、まもなくのことであった。
 それほど、険しい道ではないが、背の高い樹木が多く、昼間でも薄暗い。
「ここは、おそらく、街道として使われてたんじゃないかな? 」
 腐った木の立て札が落ちていたり、馴らされた一本道があったりと、人の行き来したような形跡を、ケインが指差した。
 町人たちの話では、今では、樹木が密集していて、崖が見通せず、危険ということで、整備された街道を使うようになったのだと。
「だけどさ、見ろよ? 」
 カイルが、顎で指した方角には、果物の芯や、食べカスと思われる物が、岩の側に落ちていた。
「あの食いカス、まだ新しそうだぜ? つい最近、人が通ったってことじゃねぇか? 」
「だけど、行商人とか、普通の通行人にしては、様子が違う」
 ケインが、その岩に近付いていく。
「ああ、そうだな……」
 何気ない仕草で、カイルは、後ろにいるクレアに、手のひらでストップをかけた。
 クレアが、立ち止まる。
「争った後がある。人間の血か、動物の血かは知らねぇが、動物にしちゃあ、かなりの量だぜ」
「果物カスが多いところを見ると、一見、大型動物かと思ったが、……屍骸(しかばね)らしいものの痕(あと)がない」
「……一呑(ひとの)みなら、痕は残らねえからな」
 カイルとケインの目が合う。
 クレアはビクッとして、息を飲んだ。
 三人の考えは、一致した。
 魔物が、森に住む、または行き来していた動物たちや、しばらく前まで通行していた人間達を襲った。
 しかも、大きな動物でも人間でも、丸呑み出来るほどの大きさだろう、ということに。
「そんなヤツがこの辺りに侵出するってぇことは、どこかに次元の穴があるはずだよな? 」
「ああ。もう少し先に行ってみるか……」
 そうして、しばらく進んではみたが、似たような景色で、次元の穴のようなものも見付からずじまいだった。
 三人は、倒れている樹木や、岩の上に腰掛けた。
「この木だって、人間が伐採したような斧の跡はないし。何か、『大きな力で倒された』って、感じだよな」
 樹木の黒ずんだ痕(あと)に触れながら、ケインが言った。
「魔法か何かかしら? 大きな生き物が体当たりしたようにも思えるけど」
「この高さからすると、かなり大きな身体ってことだ。だけど、さっきから、全然動物なんかは見かけないから、……やっぱり魔物だろうな。でも、いったい、どこから……? 」
「ねーっ! はやく遊びに行こうよー! 」
 言うと同時に現れたのは、やはりミュミュだった。
「お前、とっくに遊びに行ってたんじゃなかったのかよ? 」と、ケイン。
「だって、一人じゃつまんないし、もうすぐパレードの時間になるって、街の人たちが話してたから、教えに来てあげたんだよー」
「おお! そうか! 」
 カイルの瞳がみるみる輝き出した。
「なあ、もうだいたいここの道はわかったから、パレードでも見に行こうぜ! 」
「行こう、行こう〜! 」
 ミュミュは、カイルの肩の上に座り、カイルは、はしゃいで駆け出してく。
 その後を、ケインとクレアは、まあいいか、とついて行った。


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