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作品名:バジリスクの宝物 作者:ユウ

第8回   第六章 ヘンルーダ 前編
「いたっ」

今日は一段と頭痛がひどい。

3日前、理沙と別れてからずっとだ。

これが目のせいなのか、疲れからなのかわからない。

この3日、僕は部屋から出なかった。出られなかった。

理沙と会う勇気がなかったのだ。

はぁ。なんでこんなことに。



〜回想〜


「理沙か?」

「うん」

「何してんだ?」

「こっちのセリフ」

「・・・。散歩だ」

「眼・・・見えるの?」

「いつから居たんだ?」

「私の質問に答えて」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「あなたが山に入った時・・・」

「声をかけてくれればよかったのに」

「そうしようかとも思ったけど、直がどんどん先に行っちゃうから」

「・・・」

「時々、目隠しずらしてたよね」

「・・・」

「見えるの?」

「・・・」

「嘘をついてたの?」

「最近良くなったんだ。でもまだ慣れないから訓練してた。完全に回復したら理沙に言おうと」

「嘘」

「理沙に嘘なんかつかない」

「それも嘘ね。じゃあ眼隠しとってよ」

「出来ない」

「なんで?」

「出来ないんだ」

「・・・」

「・・・」

「・・・そう。私帰るね」

理沙の小さな足音が遠くなる。

言えない。言えるわけがない。

誰が信じられるんだ、こんな眼のこと。

それに。

言ってしまったら。

理沙は僕の前に二度と立たない。


〜回想終〜



引き籠ってから7日がたった。

僕は未だに部屋の中でまるまっている。

理沙からの連絡もない。

やっぱり嫌われたのだろうか。

このまま二度と会えないのだろうか。

でも、会って何を話すと言うのか。

いっそこの眼を本当に潰してしまおうか。

頭が痛い。



ベッドの上に転がっていたらいつのまにか寝てしまっていたようだ。

時計は午後5時を指している。あんな事が無ければ、この時間は理沙と二人で夕食を食べる場所を探している筈だ。

はぁ。

溜息しか出てこない。



コンコン。

誰かがドアを叩いている。今は出る気にならない。

ゴンゴンッ。

うるさいなぁ。僕は出たくないんだ。

バンッバンッ。

しつこい。それに豪くノックが乱暴だ。

「チッ」

しかたなく出ることにする。

目隠しをつけ玄関に移動するその間も、乱暴なノックは続いていた。

「誰ですか、乱暴だなぁ」

鍵を開けドアノブを回す。

―と同時にドアが飛んできた。

乱暴な訪問者はドアを渾身の力で蹴っ飛ばしたらしい。

僕の部屋は日本の住宅にしては珍しく内開きなのだ。

「いっってぇ」

何しやがんだ、このボk

「こぉの、ッボケナスがぁ!!!」

聞き慣れた声。だけどいつもと様子が違う。

なんだか、ドスがきいているような。

「り、理沙!?」

どんなにいつもと違っても、この声だけは聞き間違えることはない。

理沙の声だ。たった一週間なのに懐かしいと思っ

「どれだけ心配させんのよ!」

「えぇ!?」

突然現れた理沙はずかずかと僕の部屋に上がり込んできた。

僕を何度も小突きながら。

僕は後退を繰り返し、ベッドの前辺りまで戻されてしまった。

理沙は僕の胸倉を掴む。

「あんたが悩んでるみたいだったから! そっとしておいたら付け上がりやがってぇぇぇ!!!」

「だ、だって」

今まで聞いたこともない粗暴な口調に僕はたじろぐ。

「だってもクソもあるか! 今日で1週間、いつまでウジウジしてんの!」

僕を壁に押し付け締め上げる。

「ちょっと・・・苦じ・・・」

「なんとか言いなさいよ!」

理沙は乱暴に僕を揺さぶる。壁に何度も頭をぶつけた。

「ちょ、やめ。目隠しが・・・」

「あんた、何隠してんの?」

「・・・」

それだけは言えn

「言いいいええええぇぇぇ!!!!!」

「わかっわった、いぅ、から」

「それでいいのよ」

「ケホッ」

やっと放してくれた。



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