日曜日。僕は理沙と遊園地に来ていた。
眼が見えなくてもジェットコースターには乗れるでしょ、と誘われたのだ。
彼女は僕の眼のことを気にかけてはいるが、それ以外のことは全て普通に接してくれる。
移動する時は理沙の右肩に僕の右手を乗せ、後ろをついていくように歩く。
これなら誰にもぶつからない。
楽しい時間は速く感じるもので、とっくに日は暮れ、辺りは薄暗くなっている(らしい)。
帰り道。
人通りもあまりなかったので、僕の場所は理沙の後ろから横になっていた。
眼は開けない。手をつないでいた。
うん。すごくドキドキする。
これって恋人同士に見えるよね?
ぶっちゃけた話、僕は理沙が好きだ。
振られるのが怖くて告白をしていない腰ぬけ野郎ということ。
顔は見たことないけどきっと可愛いんだろうな、とか声は好きだな、なんて妄想をしている間に―
何かにぶつかった。
「痛ぇなオイ! 何処見て歩いてんだクソガキ!!」
人にぶつかってしまったらしい。
「すみませんでした」
理沙が謝る声が聞こえる。
僕も頭を下げる。
「すみませんじゃすまねぇんだよ!」
「オイオイ、骨折れちゃってんじゃねーのコレ」
「どうしてくれんだよ!」
声から判断するに三人。酒臭い。酔っ払いかよ面倒くせぇ。
そして一人が気付いてしまった。
「こいつ、眼隠しなんかしてるよ」
後の二人も便乗する。
「そんなもん付けてっからぶつかんだよ」
「取っちゃえ、取っちゃえ」
やめろ。それだけはやっちゃいけない。
僕から眼隠しが離れる。
僕はギュッと眼を瞑る。
「おい、目ぇ開けろよ」
嫌だ。
「やめて!」
理沙が叫ぶ。
「うるせぇ! 引っこんでろ!」
「きゃっ・・・」
ドサッと倒れる音がした。
「理沙!?」
―その拍子に。僕は眼を開けてしまった。
絡んできた三人をしっかりと見てしまった―
三人は倒れ、動かない。
突き飛ばされていた理沙が視界に入ることはなかった。
僕は眼隠しを奪い返すと素早く付け直す。
「理沙! 何処だ! 逃げよう!」
「ここだよ!」
理沙の手が僕の手を握る。
僕たち急いでその場を後にした。
[男性三人、路上で変死]
次の日の新聞の見出しはこうだった。
「あの三人、何で死んだんだろう・・・」
理沙が憂鬱そうな声で僕に尋ねた。
「さぁ? 急性アル中じゃないの?」
「そう・・・だよね。私たちのせいじゃないよね?」
「もしそうだったとしても、気にしなくていいよ。絡んできたのは向こうだし、理沙だって突き飛ばされたじゃないか」
「うん・・・」
「悩んだって仕方がないよ。じゃあ、また明日」
一人になると考え込んでしまう。
いくら相手が悪いと言っても。
あれは―あの三人が死んだのは―
僕が彼らを見てしまった所為だ。
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