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作品名:バジリスクの宝物 作者:ユウ

第3回   第二章 ヤマカガシ
僕は山中直。現在大学で近現代文学を専攻している。

六年ほど前に故郷を離れ、今は悠々自適な一人暮らしだ。

しかし、僕は眼が見えない、ということになっているので、大学では苦労が絶えない。

講義中に出される課題には、常に友達の協力がいる。

問題文を読み上げてもらわないとわからないのだ。

点字は多少読めるようになったが、点字付きのテキストなど無いのであまり意味はない。

そのあたり、僕はものすごく理沙の世話になっている。

彼女は可能な限り僕の隣に座り、ぼそぼそと耳打ちをしてくれる。

その上頭もいいので、わからないことは教授より理沙に聞くことの方が多い。

彼女の協力なしでは卒業も危ういだろう。

昼休み。

僕はいつものように理沙と昼食をとる。

「レポートめんどくさいなー」

「あんまり時間かからなかったよ、アレ」

「もう終わったの? 眼が見えないのにがんばるなぁ」

「あとでチェックお願いできる? 打ち間違いがあるかも」

「いいよー。ついでだからちょこっと写さしてね」

こんなやり取りもいつものこと。

「次の講義は・・・3号館だったね。そろそろ移動しないと間に合わないか」

「そうだね、行こう―っつ」

眼の奥に痛みが走った。

「どうしたの?」

理沙は僕に聞く。

「何でもない。気にしないで」

「ふーん。ならいいけど・・・」


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