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作品名:バジリスクの宝物 作者:ユウ

第2回   第一章 イヴィルアイ
僕が十歳になる誕生日の日のこと。

僕は頭が痛くて学校を早退した。

家に帰ると、母が夕食を作っていた。

誕生日だからと、早いうちから支度をしていたのだ。

僕は頭が痛いから少し寝ると、自分の部屋へ向かった。

ベッドにしばらく転がっていたが、痛みは治まるどころか、徐々に激しくなっていった。

時折、母が様子を見に来たり、薬を置いて行ったりしていたが、よく覚えていない。

頭が痛い。こめかみ。眉間。眼の奥の方。

燃える様に熱かった。

苦しみ疲れて、僕はいつしか眠りに落ちていた。


起きた時、頭に痛みはなくすっきりしていた。

台所の方からは、まだ料理の音が続いていた。

記念すべき、僕の十回目の誕生日。

今日のご飯は何だろう。

僕は台所へ向かった。

先程までの激痛のことなどすっかり忘れ去っていた。

台所へ行くと、リズムよくフライパンを揺する母を見つけた。

「お母さん、今日は何作るの?」

次の瞬間、母は小刻みに震え出し、そして倒れた。

「どうしたの!?」

僕が駆け寄った時には既に母は息絶えていた。

とにかく、誰かを呼ばなくちゃ。幼い僕はそう思い、隣の家まで走った。

僕が住んでいたところはかなりの田舎で、隣の家といってもそこそこ距離があった。

近所付き合いも昔からよくあり、その家のおじさんには良くしてもらっていた。

家族に相談出来ないことは、よくおじさんに話していた。

おじさんの家に着いた。

家の扉を乱暴に叩く。

「おじさん! おじさん! たすけて!!」

家の中からおじさんの声と走ってくる音が聞こえた。

「直か!? すぐ行くぞ!!」

本当にすぐに扉は空いた。

しかし、おじさんの顔を見て安心したのも束の間だった。

「どうしたんだ! なにがあっ・・・」

おじさんはそこまで言うと倒れてしまった。

いよいよ僕は訳が分からなくなって、とにかくそこらじゅうの知り合いの家を訪ねて回った。

訪ねて回った全ての家で、反応は同じだった。

みんな倒れた。途中ですれ違った人も死んだ。

犬も猫も鳥も、みんなバタバタと斃れた。

僕の慟哭だけが静まり返った村に大きく響いていた。


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