「やっぱり、眼が見えないのって大変?」
そういって、小門理沙は僕が落とした携帯電話を拾った。
「ありがとう。・・・もう慣れてるよ」
僕達は、こんな他愛ないやり取りをもう二年も続けている。
大学に入って半年くらいの時だった。
僕が研究室の前で書類をぶちまけて困っているところを助けてもらった。
それから彼女とは仲がいい。
一緒に食事をとったり、講義を聞いたり。
カラオケに行った時は感心されたりもした。
歌詞も見ずによく歌えるもんだ、と。
彼女は僕のよき理解者だ。
僕の相手をしてくれること。
発言がストレートなこと。
僕が自分でやりたいことを見つけた時は、そっと陰から応援してくれること。
僕は余り気を使われるのが好きではない。
彼女との絶妙な距離感が、僕は大好きだ。
彼女は何だって僕に話してくれた。
僕も何かがあれば真っ先に彼女に相談する。
僕たちの間に隠し事は存在しない。
ただ一つ、僕は眼が見えない、という嘘を除いて。
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