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作品名:ライフ・トレイン 作者:えみ

最終回   7
 母親ってこういうものなんだな。
 父さんには悪いけど、やっぱり違うな。なんか違う。
 母さんがあの時、僕を生むと決断しなければ、僕はいなかった。
 そしたら、母さんは今も元気で生きているかもしれなかったんだ。
 僕は生きている。これからも生きなきゃいけない。
 「母さん」
 「なぁに?」
 「僕を生んでくれてありがとね」
 「いいえ、どういたしまして」 
 そう答えると同時に、母さんは勢いよく立ちあがった、
 そして、スーパーの袋を取ると、右手を上げて、
 「肉が傷むから帰るわ」
 と、あっさり言った。
 僕は拍子抜けして、口を開けたまま、母さんを見上げた。
 涙がぴたっと止まった。
 「じゃあ、がんばんなよっ!」
 バシッと僕の肩を叩いた。
 痛い・・・。
 
 ガタン。
 
 ものすごい揺れで僕は目を覚ました。
 「?」
 眠っていたのか。
 もしかして、今までの出来事は、全部夢だったのだろうか。
 僕は周囲を見た。いつもの電車内の風景だ。
 うん、間違いなく夢だろう。
 普通に考えてありえない体験だ。
 だけど、夢だろうが何だろうが、そんなことはどうでもいい。
 僕は母さんに会った。
 それだけで十分だ。
 
 アナウンスが流れ、僕がいつも会社へ行く時に降りる駅の名前が告げられた。
 さてと、仕事に行くか。

 電車が駅で停まる。
 僕は立ち上がると、電車を降りて、いつもの会社へ向かった。
 気楽に生きていくかな。


                                     
                                完


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