家に帰る途中、僕はいつものコンビニに立ち寄り、時間を掛けて夕食を選んだ。どれも美味しそうに見えたのだ。こんなことは本当に久しぶりだった。いつも生きるために仕方なく食事を取っていた。ビールも二本買った。レジに並ぶと高校生くらいの「研修生」と書かれた名札を付けた女の子が店員として立っていた。いつも見掛ける、胡散臭い年齢不詳の男はいなかった。そうやって毎日は少しずつ変わっていくのだろう。 「温めますか」 「お箸は何膳お付けしますか」 緊張し、少し高い声で強張った笑顔の女の子が僕に問いかける。僕は手を振って「必要ない」という仕草を二度した。さすがに笑顔を返すことまでは出来なかったけど。変わっていく。僕も少しずつ
部屋に帰ると、床に雑然と置かれた本や書類が気になった。買い物袋をテーブルの上に置いて、ビールを冷蔵庫に入れると、床にひざまずいて本や書類を集めだした。それらが片付くと、別の場所も気になりだす。必要な物だけを置いていたつもりだったが、いらない物や、隅々に少しずつ溜まっていた汚れがあることに気付く。とうとう僕はゴミ袋片手に大掃除を初めてしまった。なんだか楽しくて、僕は思いつくままにメロディを口ずさむ。 「?」 もう一度、口ずさむ。
生きるって素晴らしいことなのかもしれない。 その時、僕を呼び出す電話が鳴った。
完
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