山田の数十メートル後をひっそりと追う私。相変わらず、山田はのそのそと呑気に歩いている。しかし、あれも全て敵を欺くためなのだ。なんてゆう男なんだ。今まで私は、アイツの作戦にまんまと騙されていたなんて。しかし、今はそんな後悔の念は脱ぎ捨てるのだ。余計なことを考えている余裕はない。アイツから目を背けるな。アイツを見失わないようにしながら、周囲の人間にも気を配らなければならないのだ。私の心は今、FBIと同化した。この任務を必ずや達成してみせる。 しかし、研究所の人間もよくあんなのろまな山田なんかを仲間にしようと思ったな。隠れた才能があるのは、今回のアイツの行動を観察して思い知らされたさ。だが、アイツを見た目で判断するなら最悪だ。アイツを信用する要素なんかどこにもないじゃないか。私が研究所に人間なら、漬物の事実を山田が発見した時点で山田を殺害し、自分たちだけで密かに研究を続けるだろう。そうしないと別の不安要素がたくさんだ。あんな便りない奴にこの一大プロジェクトを託せるはずがない。でも研究所の人間はそれでも山田を仲間に引き入れた。研究所の人間もまた、侮れない奴らというわけか。山田のああいう不安げなオーラは山田自身が綿密に計算し、作り上げたものなのだろう。アイツは「頼りない山田」を完璧に演じきっているのか。アカデミー賞ものだよ、山田。もしかしたら、山田は元々、研究所の人間で、そこから世に送り出された刺客という線もある。スキを見せないようにしなければ。
突然、山田が立ち止まった。
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