もしかすると山田は研究所の人間というだけではなく、研究所の幹部に位置する存在なのではないか。間違いない、きっとそうだ。私は今まで「山田」と呼び捨てにしていたが、今後はそういうわけにもいくまい。「山田先生」と呼ぶことにしよう。 先生は百点満点のスマイルで会社が終わる夕方の混雑時の客をさばき、職務をまっとうされていた。さすがだ。一点の迷いもなく、出来上がった弁当を箸を入れ忘れることなく袋にいれ、正確で素早いレジ打ち。厨房が手間取ってきたら、進んで厨房に入り、唐揚げを揚げた。私の肉眼では確認することが出来なかったが、その合間を縫って漬物&コーヒーで実験というわけか。研究所の人間にとって、先生は模範になる憧れの存在であることは間違いないだろう。会社に勤めていた私がそうであったように。分るよ、先生。それはそれで結構大変なんだよな。私なら先生のその苦しみも理解することが出来る。今日から私たちは、心の底から信頼しあった相棒となるわけか。それも悪くないな。ただ照れくさいから「先生」と呼ぶのは止めてもらいたい。 私は山田先生がバイトを終えて、店から出てくるまで辛抱強く待った。もちろん先生の足を引っ張らないように電柱の陰からこっそり観察させてもらっている。これから私たちはあらゆる困難に立ち向かって行かなければならないわけか。私たちは互いを信じ合い、力を合わせ迫りくる敵と戦って行くのだ。
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