その時ボクが見に映った隆は、友達としてでなく試合に挑む前の柔道家としての姿だった。 敵を威嚇する鋭い眼光、相手の姿に物怖じせずに勇敢に向かう隆をボクは見ていたのだ。 「隆・・・」 「どうしたんだよ。お前はおかわりしに行かないのか」 振り向いたその顔にはいつもの優しい顔がのぞかせていた。 「俺って隆にとってどんな存在なの?」 何故、その言葉が出てきたのかは分からない。自分の考えをまとめるわけでもなく無意識にボクの口からはそんな言葉が出ていた。 「なんだよ、気味悪いな。彼氏・彼女の会話じゃないんだからさ(笑)」 雄也もボクの質問に少々驚いたらしい。口元へ運ぼうとしていたスプーンの手を一度休めてボクの方を見た。 「どうしたんだよ、急に」 「いや、自分でも良く分からないんだけど・・・なんていうかさボクは隆も雄也も友達だと思っている。実際に今、3人でこうして準備さぼってまで一緒にここに来るんだからさ。でも、こういうことをするのが友達ってことなのかな」 「友達ねぇ」 隆はボクの言った言葉を復唱すると空を見上げた。 「じゃあ、友達ってどういう意味って言われて答えられる?」 「友達は友達だよな。」 雄也は再び氷を口に頬張りながらボクに言う。 「上手く言えないけど、そこに意味を求める必要ってないと思うよ。だって俺は肉が好きだけどなんで好きなのか聞かれたって、そんなの好きだから以上に答えらえねぇもん。」 「・・・やっぱぁ、そんなもんだよね。」 僕らの夜はまだ長い・・・
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