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作品名:山手商店街の愉快な仲間達 作者:Migeル

第2回   ロクでもない

これはとある商店街でのおはなし

三年前に商店街に印刷店を持ったばかりのノブが一人笑いながら
飲み屋「かずちゃん」の引き戸をガタピシ言わせてあけた。

「よお」
中から駄菓子屋のタクの声がした。

ノブは笑いを噛み殺すのに苦労しながらタクの横に座った。

タク「どおした?何がそんなのおかしい?偽札でも印刷したのか?」
ノブ「おいおい、それは多分犯罪というものだ。」
タク「多分かよ。」

   皿に盛られたピーナッツを勧める

ノブ「いや、自転車屋のロクさんの異名がようやく理解できてさ」
タク「ロクでもないロクってやつか?」

   ノブはこらえ切れなくなって涙を流してひいひい言ってる。

タク「何がどうしたんだ?」
ノブ「お銚子欲しいなあ。」
タク「はいはいはい。っと。 かずさあん、お銚子ひとつ〜」

女将が例によってテレビを見たまま手を振って返事をした。

ノブ「実はさロクさんて自転車屋なのに熔接だのなんだのって器用にこなすでしょ?」
タク「そうさ「腕はいいんだけどねえ」のロクだからなあ」
ノブ「なのになんで「ロクでもないロク」なのかなあって思ってたんだよ」
タク「ロクの噂話って言ったことなかったっけ??」
ノブ「パンク修理に来たおばはんのママチャリを勝手に30段変速に改造したってやつ?」
タク「なんだ知ってんじゃないか」

女将が相変わらずテレビを見たままお銚子をトンとカウンターに置いた

ノブ「30段になったんだから腕がいいというだけならわかるけど・・・」
タク「でもさ、ロクのやつ「これで時速50kmは楽勝です」って自慢げに言ったんだぜ」
ノブ「知ってるけど、俺なら普通に喜ぶけどなあ」
タク「おばはんが大根とか葱とかカゴから出したまま50kmで走ってるところ想像してくれよ」
ノブ「そ・・・それは怖いかも・・・・」
タク「だろ?」

タクは満足した顔で椅子をきしませて座りなおした。
ノブはお銚子を持ち上げながら

ノブ「そのロクでもないロクさんに相談したわけよ」
タク「パンクでもしたのか?」
ノブ「いあいあ、うちの作業用のパソコンの周りが散らかってるから何とかならんかなあって」
タク「おいおい、ロクはパソコンなんて流石に使えないぞ」
ノブ「違うって。パソコンの周りを片付けるのにラックを作って欲しいと」
タク「なるほど」

タクも銚子を傾けた

ノブ「そしたらロクさんガスバーナと捨てるはずだった自転車のフレームをわんさかもって登場したわけ」
タク「そうなるわなあ」
ノブ「2時間くらいかなあ、できちゃったのよパソコンラックが」
タク「そりゃ、それを作りに来たんだし・・・」
ノブ「それが元が自転車のフレームだろ、頑丈なことったら・・・」
タク「確かに、元々人間が乗っても平気なもんだろうからなあ」
ノブ「頑丈だけじゃないのよ、これが」
タク「どうした?」
ノブ「モニターも固定できてプリンターもきっちり固定、震度7だって平気じゃない?ってくらい」
タク「そりゃすごいな。。でもそれじゃロクでもないロクさんらしくないなあ」

ノブ「くくくく・・・・がははははは」

タクは何がおかしいのか理解できないまま銚子を勧める

ノブ「いやね、ラックにさ、ベルが付いてたんだよ」
タク「チリリンってあれ?いいじゃん、それくらい付けさせてやれよ」
ノブ「俺もさ、最初、嫁さんにコーヒー入れて〜チリリンって便利かなって思ったのよ」
タク「おおお。それは便利かもしれんなあ」
ノブ「それが違ったのよ」
タク「鳴らなかったのか?」
ノブ「いあいあ、鳴るんだけど使い方が違う」

タク「うーん・・・・」

タクがおおげさに腕を組んで考える

ノブ「ロクさんいわく、どいてもらうために鳴らすんだと」
タク「はああ?」
ノブ「ペダルが付いてたのさ、パソコンラックに・・・」

すすってた日本酒を噴出すタク

ノブ「ちゃんと漕いだら進むパソコンラック」
タク「それはロクでもないロクさんだ」
ノブ「だろ?で、ロクさん「これで出張パソコン教室できるだろ」って自慢げなんだよ」

タク「そうとう頭のネジが抜けているな」
ノブ「でさ、うちのパソコンの作業スペースって・・・」
タク「あ・・・・」
ノブ「そう・・・2階なわけで・・・・階段下りれるはずもなく・・・」

肩をたたきあって大声で笑う二人

後ろから「寝させてくれよぉ」とごんちゃんの声がした

少し小声になりながらも話を続けた

タク「そういえば福引大会でのロクの話しってるかい?」
ノブ「いや、景品出すってのは聞いたけど普通の電動アシスト自転車だって聞いたけど」
タク「景品はそれだけど、じつは、イベント用に面白自転車を作ってくれないかと会長が頼んだのさ」
ノブ「まあ、ロクさんが作れば全部面白自転車なんだろうけど・・・」
タク「ほら、観光地のレンタルサイクリングにある並んで乗れる自転車あるじゃん」
ノブ「あああ、おしおきだべええの時に乗ってるあれ?」
タク「それそれ、会長はそれを頼んだらしいの」
ノブ「以外に普通だね」
タク「普通じゃないのはロクの頭の中さ」

笑いながらノブはタクに銚子を勧める

タク「あれって縦に並んで乗るだろ?」
ノブ「ああ、一列にムカデ競争の自転車版だよね」

タク「ロクのやつ横に並べちまったのさ」
ノブ「やるねええ!!でもそれって湖の白鳥ボートみたいで面白そうジャン」
タク「そんな気の利いたもの作ると思うか?」
ノブ「でも横三人っていったら・・・」

説明がむずかしいのかノブの方に向かって座りなおす

タク「まず一人乗りの自転車を想像してみてくれ」
ノブ「おお、想像したぞ、ままちゃりだ」
タク「それでOKOK で、スキーのリフトを想像してくれ」

ノブ「ん?それって白鳥ボートに逆戻りしてないか?」

タク「違う違う、ノブの想像したのって3人乗りゴンドラって奴だろ?」
ノブ「何を想像すればいいのやらさっぱり・・・」

タク「一人乗りのリフトさ」
ノブ「ええええええ」

タク「普通の自転車の両脇に天秤棒で二人がぶら下がるように座る」
ノブ「ありえねえええええ」

タク「一応、会長とごんちゃんとシゲジで試運転したんだけど危なくて乗れないってんでイベントは中止・・・・」
ノブ「そりゃそうだ、うちのパソコンラックの方が実用的だわ」


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