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作品名:STALKER  作者:ボタスキー

第1回   ZONE
986年に爆発を起こしたチェルノブイリ原子力発電所。この跡地で2006年に再び謎の大爆発が起きる。
この爆発の影響により30kuに及ぶ広い範囲が核汚染の被害にあう。

時は経ち2012年。

汚染された跡地一帯は、突然変異によるモンスター達が生息する「ゾーン」と呼ばれる危険地帯と化した。そんなゾーン周辺には生活するためのビジネスが成り立ちはじめる。危険な依頼を請け負いその見返りに多額の報酬を受け取り生計をたてていく「ストーカー」と呼ばれる荒くれ者達がゾーン周辺で暮らし始めていた。

俺は死に物狂いで湿地帯を疾走していた。いや疾走していたというのは間違いだろう。ぬかるんだ地面は足を着くたびに深く沈みこみ、それは膨大なエネルギーロスとなって、俺の死に物狂いの走りを大幅に遅らせていた。何故、俺は走るか?簡単だ。今にも「ブロウアウト」が始まろうとしているからだ。「ブロウアウト」とは簡単に言えば放射能の嵐だ。それは定期的にZONEのなかで発生し、生きとし生ける「普通」のもの全てを死に追いやる。俺は「普通」の生き物だ。このまま屋外にいたんじゃ強大な放射能の力によって即死、あるいはもっと過酷な(思いつく限り最低の)ゾンビとしての人生がまっていることになる。早く退避できる頑丈な建物か深い洞穴にもぐりこまなければならない。幸い、俺はルーキーじゃぁない。既に自分で見つけておいた緊急避難所の場所がPDAにインプットされている。今向かっているのは廃棄された工場だ。
何を作っていたかは知る由もないが堅牢なコンクリで造られ、地下室つきのその場所は避難場所にうってつけだった。
足を上げるのがダルくなってきた。体力には自身があるほうだが、この湿地帯は想像以上の性悪女だった。迂回するべきだったかもしれない…などと思い始めた矢先、世界が変わり始めた。空はゆっくりと赤く染まり始め、地平線には雲のようなものが地を這うように流れ出していた。
「…!!ヤバイ!!!」
ブロウアウトの兆候だった。それも最終段階だ。雲のように見える何か。それは雷と暴風と放射能から為る、無慈悲な暴君だった。生ける物が彼と対面したとき、生ける者はその命を彼に差し出すほかに選択肢は無かった。

退避場所の工場まで200mほどだろうか、普段はなんのことはない距離だが、今は走っても走っても目標に近づけない悪夢をみているかのようだった。
ブロウアウトは着実に迫っていた。地を舐めるように広くZONEの大地に立ちこめていくソレは対象が「普通」か「異常」であるかに頓着せず生きとし生ける者全てを飲み込んでいった。
俺はやっとのことで湿地帯を抜け平らな大地に辿り着いた。もう後ろを振り返っている暇はない、地響きが死の嵐が間近に迫っていることを知らせていた。
ただがむしゃらに走った。メイン武装のAK74アンダーバレルグレネードランチャー付きも投げ捨てた。コイツは俺の愛する相棒だが、今この状況では5kg超えの重りでしかなかった。早く気づくべきだったと悔んでも、もう遅い。
工場の薄く開いた鉄扉が見える!俺は素早くその隙間に身を滑り込ませた。その刹那、俺は死の嵐を手が届くんじゃないかと思うほどの間近で見た。いや、見上げたといった方が正しかったろう。それは巨大で荘厳な死そのものだった。見る者を圧倒せずにはおれぬその威容。俺の思考回路は一瞬スパークして活動を停止した。結果半開きのドアから顔を覗かせたまま固まるという愚を犯した。
バゴンッッ!!
死の嵐に先行してやってきた豪風が工場の鉄扉を乱暴に閉め、哀れにも俺は顔面で鉄扉の猛烈なパンチを食らい吹っ飛んだ。真っ暗闇に星がチカチカと点滅した。
「ぅうう...ぅおおおぅ」俺は盛大に鼻血を噴出しながら、よろよろとよろめいた。
「畜生、今日はツイてね...」悪態は最後まで言えなかった。何故なら工場の薄闇の中にぽっかりと開いた穴、底知れぬ闇へと落下していったからだ。
廃工場に俺の短い悲鳴が響いた。


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