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作品名:ケチ 作者:涸井一京

最終回   1
 ケチは物を大事にする。使えなくなるまで使う。地球環境に優しい。 ケチは損というのがとにかく嫌いだ。どのような犠牲を払おうとも避けようとする。大きな目で見ると、そちらの方が損でも、目先の損が嫌いだ。
 世の中にケチしか存在しないと、金は回らず、経済を破壊するだろう。
 自分の場合、自らの命を救った。
 死ぬことばかりを考えていた。死ぬ日を考えてはいたが、方法は考えなかった。
 人生はただただ苦痛である。この世の中で生きていることに伴うありとあらゆるわずらわしさから逃れる。それは合理的かつ先進的で、英雄的な気分。
 そんな自分が、命が惜しくなったのは、ケチ故に落とす命が惜しくなったのだ。
 ケチは褒められたことではない。が、自殺を思いとどまることは、第三者的には結構なことなのだろう。しかし当人にとっては困った話だ。何しろ将来のことを全く考えていない。
 頭やら首が痒くなる。思考停止の言い訳になるためか、痒くなる本来の原因があるのかは不明だ。
 痒みを限界以上に我慢すると、ムズムズ不快ではあるが、どこが痒いのか分からなくなる。気が狂うほど我慢し続けるか、広範囲をあちこち掻く羽目に陥る。一時の痒い所を掻く快感に溺れると、後には血と後々までひきずる傷。傷付きの痒みは、痛みが伴う分だけ、苦痛が増す。だから一般的に掻くなと言われる。かゆみ止め薬でも塗って、我慢しろと。
 問題は、それを買う金が無い事。更に問題なのは、痒みを止めても、死ぬことしか考えて来なかった自分には、やる事が無い事。だから、どうなろうとも痒みを我慢する。
 断崖絶壁でただ立ちすくむ。進むべき道はない。


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