準備は整った。 この地は最適――ではないが、それでも今回の儀式に使うには丁度良い。 大地を流れる脈に術を刻む。大気に術を送り込む。大空に術を張る。 後は主演が集まるだけ。この地では七人が限度だが、そもこれは実験。あまり増やしすぎるのも良くないだろう。 「さて」 呟いた言葉と共に、優しい風が吹く。次いで羨望と破壊衝動。礼儀正しい憎悪。陰湿な陰謀。無垢な水。故意の悪意。無意識の善意。 「まあ順当だろう」 髪をかけ上げて鞄を手に取る。後は、背中を押すだけだ。 「さあ、マスカレイドの開幕だ。良い色をつけて欲しいものだね」 呟く言葉に答えはない。そもそも答えなどいらなかった。欲しいものは結果だけ。この仮面舞踏会で最後まで踊り続けたモノだけだ。 まずは誰の背中を押そう。そう考えれば、今の僕にはただ一人しか思い浮かばなかった。 師匠に弓引く行為だけどそこに後悔はないし反省もしない。だって―― 「魔術師なんてのはそんなものだろう」 呟く言葉に、やはり答えはなかった。
|
|