ピンポーン・・・。 「新宿警察ですけど」 「もういいよ、あがって」 いつも通り、みどりは冷たい。 「ちわーす」 「今日は鍋だよー」 「いいねぇ〜」 ぐつぐつ音をたてる鍋。 「もう準備OKやん」 「ほんとタイミング良いよね、しげるはぁ」 「やっぱ俺とみどりは合うねんなぁ〜」 「あったり前じゃん」 「ほな、乾杯する前に一つ、俺から重大発表があります」 「オーディション?なんか受かったの?」 「留学します!」 「ええぇ!どこに!どこに!?」 驚いた顔を俺に近づけて聞くみどり。 「京都です!」 「京都って日本の!?」 「そうや」 それ以上は何も聞いてこないみどり。乾杯もしていない晩酌が、みどり主導で始まる。 「みどり?みどりちゃん?悲しいとか、寂しいとかないん?」 「京都でしょ、すぐ会えんじゃん」 ワールドワイドな考え方。 「でもしばらく会われへんで」 「しばらく会わないつもりなの?」 みどりの返しに、ドキッとする。 「会いたい気持ちがあれば絶対に会えるよ。会えないことなんて絶対ない・・・」 鍋のせいなのか、頬を赤くするみどり。 「みどり・・・結婚しよ」 「それは早い」 「そこはダメなんやなぁ。」 (会いたい気持ちか・・・たかだか京都やもんな。) 「よっしゃ!W都でこれからもつながっていこう!」 「そうだよ!W都で頑張ろう!」 前向きな二人は、前向き鍋をつつき、前向きにこの夜を楽しんだ。 鍋も終わり、片付けを少し手伝おうとすると、 「いいから、しげるはゆっくりしてて」 「へーへー。ほんじゃベランダでタバコ吸ってていい?」 「え!しげるタバコ吸うの?」 「ここ二ヶ月ぐらいで吸うようなってん」 「今になってグレ始めたんだね」 「二十歳越えとるっちゅうねん」 「ベランダ寒いから中で吸ったら?」 「いいねん、みどりの家のベランダが好きやねん」 そう言うと、一人、ベランダへ向かう。 右手にはミルクティー、左手にはピースライト、遠くには東京タワー。 洗い物が片付き、ベランダに出て来るみどり。 みどりは夜景を見ながらそっと俺に寄りそう・・・。 「ええ景色やな・・・」 「目に焼き付けといてよ、この景色・・・」 「そやな・・・もう当分は見られへんもんなぁ」 吸った煙を吐く、それを見ていたみどりが、 「なんだか不思議だね、しげるにタバコって」 クスクス笑うみどり。 「何もおかしいことあれへんがなぁ」 「新鮮で笑っちゃったの。・・・タバコ吸ってる横顔、カッコイイよ」 そう言って、頬にKissをするみどり。 もう何も驚くことはない。今の二人には何が起こっても不思議なことなどない。 タバコを消し、みどりとKiss。長い夜の長いKiss・・・。 冷たい夜風が二人には、とても心地良かった・・・。
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