〔ガチャ〕 ドアが閉まった。しげるが出て行った。当分会えないのに、どうして黙って出て行くかなぁー。 ベッドから起き上がり、ベランダを覗く。キスをする私としげるがぼんやり浮かび上がる。 「がんばってね、しげる」 汚れたテーブルの上に原稿用紙が二枚置いてあった。 「なんだろ・・・って言うかなんでこんなにテーブル汚れてるの!しかもマニキュアで書いてるじゃん!・・・あのバカしげる!」 とりあえずコップ一杯の水を飲み干して、冷静を取り戻し、ソファーに座って原稿を読む。 「ヘラクレスおばちゃん?」
しげるの置き手紙、もとい置き小説。 〔黄金のスカートに切れ目・・・パンツが丸見え・・・〕 始めのフレーズで、しげるが何をモチーフにこれを書いたのかがわかった。 〔ご近所に住む、大学の経堂先生〕 「なるほど、経堂先生をベランダから見たわけだ。しかしヘラクレスって・・・おもしろい・ふふ・・」 ヘラクレスおばちゃん終わりで、あとがきが書いてある。 ‐ 茶屋町作品で笑顔になれたでしょうか? 俺はみどりの冷めてるところも、目つきの悪いとこも大好きです。でも一番好きなんは、みどりの笑顔。みどりを笑顔にさせるような作品、 〔みどりの本〕を書くから、それが完成したら、俺と結婚すること。要よろしく!ではまた会おう!アディオス! ‐
「みどりの本か・・・楽しみにしてるね、しげる」 ふと、マニキュアで汚された机に目を向ける。 無茶苦茶で一貫性のない文字や絵。その中で一際目立つ文字。
みどり色で、LOVE。
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