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作品名:リフレクト・ワールド(The Reflected World) 作者:芽薗 宏

第17回   第十五章 神隠し 【前編】
 精神科医、甲斐隆一は一人で明かりの消えた診察室の中で、デスクの前に座っていた。診療時間はとうに終わっている。甲斐は帰宅する準備を追え、白衣を脱ぎ背広を纏っている。窓からは月光が差し込んできており、甲斐の姿を青白く照らし出していた。
 甲斐の目の前には一台のPCが置かれている。巷の都市伝説化したオカルト話や奇妙な体験談等が集められているとするサイトが開かれていた。甲斐自身はこの手の話には戸田治美同様、興味や関心はない。ただ、そんな話を投稿し、それに対してコメントを書き込む者達がどんな反応を示しているかを見ることは嫌いではない。そこから、今の若者達がどんなことにどんな反応を示しているのか、直接顔を見せない匿名の場所において、人がどんな言動をするかを観察することは、実は意外と情報をもたらせてくれたりすることもあるのだ。こうした場では、話の真実性は別にどうでもよいのだ。実話であろうと作り話であろうと、自分の話を書き込み、それを読んでもらい反応を得る。そこから一種の自己満足欲求を満たすのだ。その話がちやほやされれば、まさにその場では自身が主人公になれるわけである。逆に、全く見向きされなければ、そこから新たなフラストレーションが生じてくるのであるが、甲斐からすれば、そもそもそのような小さな場でしか自身の心的欲求を満たす場がなくなってきているという現状に不安を抱いているのである。
 だが今は別のことに関心が向いている。約二十日前から書き込みされ出した内容についてだ。



《魂を抜かれた子供が増えている事件が増えてます。》

1 ..マジでヤバイ名無し..2012/07/02(金) 21:19:36
ID:6jC+EyOLs
最近、妙なことがありました。私は児童福祉施設で働いているのですが、ここにいる子供三人が急に、魂でも抜かれた抜け殻みたいになってしまったんです。明るくて元気な子供なんですが、ある日突然無表情で全く身動きしなくなっちゃったんです。涎たらして、もうずっとぶつぶつ独り言を言ってるんですね。何言ってるんだろうと思ったら「お父さん」「お母さん」「パパ」「ママ」って、親を呼んでるんです。その子達三人とも、実は両親や片親を亡くしてるんです。で、その亡くなった親のことをず〜っと呟いてて。その時からトイレに自分で行けなくておもらしはするし、ご飯も食べないし、大人の力でないと体を動かせないんです。カチカチにかたまってて。水も飲まなくなっちゃって、今はその子達は点滴を受けてます。原因が全く分かりません。

2 ..マジでヤバイ名無し..2012/07/02(金) 21:38:47
ID:IhcENo9t9
何がマジでやばいの?
ここオカ板だぞ。話するとこ間違ってね?

3 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 00:19:17
ID:6jC+EyOLs
それだけなら何かの病気かと思うんですけど、私や他の職員も変なのを見てるんです。朝ご飯の時間で、子供達が食堂にやって来たんですね。その三人も来ました。で、めいめいでお膳を受け取ってテーブルに行く途中で、三人とも同じタイミングでお膳を床に落としたんです。で、突っ立ったままぽかんとした顔しちゃって。その内の一人の子の前でかがんでから、どうしたのってきいたら、亡くした親の名前を急に言い始めて。その時、「何あれ?」って他の職員が言うんです。その子の頭の上を見たら、何だか変な黒い煙だかもやだか分かんないのがぷかぷか漂ってるんです。

4 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土)01:09:58
ID:tqWJ1m580
それが何で魂抜かれたどうたらこうたらってなるんだ?

5 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 01:22:31
ID:IhcENo9t9
自演乙w

6 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 01:48:16
ID:+OcV/1vtO
つまり、その三人の子って親御さんを亡くされてるって共通点があるってこと?
他の子にはそういうことが起こってないから変だ、って意味?

7 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 03:02:40
ID:PvXlZu7KG
集団ヒステリーだね。

8 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 03:11:23
ID:F5gVnxOYsux7
親の霊が迎えに来たとか。そんな施設においとくのがかわいそで無理矢理連れてった、なんて。

9 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 03:35:14
ID:IhcENo9t9
>>8
拉致乙www 

10 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 03:41:06
ID:Wry/OX7/PNo0162
>>1
待ってください! その話、詳しく聞かせてください!
実は今夜、ウチでも。。。

11 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 03:58:13
ID:PvXlZu7KG
集団ヒステリー多発?

12 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 04:03:39
ID:Wry/OX7/PNo0162
ヒステリーだか何だかは分からないですけど、ウチの施設でも子供が変になっちゃったんです。
同じように親を亡くしてる子がいるんですけど、そのうちの4人が談話室で…
似てます。口なんて半開きで、瞬きもしなくなっちゃって、体も全然動かしてくれないし、そのうち失禁しちゃう子も出てきたし。いきなりです。みんなその親のkとをぶつぶつ行ってて。

13 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 04:08:16
ID:ZxVuifrl0
お〜、感染症じゃね?

14 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 04:13:20
ID:34yHisOuwO
>>12
おちつけ。

>みんなその親のkとをぶつぶつ行ってて。

ちゃんと入力しろ。

15 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 04:17:34
ID:IhcENo9t9
スレ主、寝たなwww



 他愛のない書き込みが続いている。別段気になるようなことはなかったのだ。
 恐らくこのサイトに書き込みを始めた職員当人かもしれないが、同じようなことを相談しに来た者がいた。子供本人を診ないと何とも言えないと答えた。そして、それならここでなく大きな病院で診察を受けるようにとも言ったのだ。心療内科では数種類の内服薬を処方はされたが、それを服用する以前の問題で、食事はおろか水分さえ一切自力摂取しようとしない子供に現在、専属のクリニックの指示により点滴処置が行われているという。その職員は恐らく、頼るところが他になく、その施設とは比較的近距離にある自分の病院に来たのであろう。だが、そのような症状を呈しているとなると、先ずは体力回復のための内科的処置が優先されるであろう。
 ところがだ。殆ど同じような症状を示した子供を甲斐自身が診察することになる羽目になってしまった。
 書き込みにある「黒いもや」なんてものには全く関心はない。最初相談に来た施設職員は若い女だったが、何故あんなサイトにその話を書き込んだのか、書き込みをした本人かどうかを確認するなんてことも、甲斐にとっては考えるに値しなかった。そんなことはどうだっていい。
 ただ、甲斐の知人であり、現在は某総合病院の心療内科医師を務める男が、
「妙な症状の子供を診た。今は情報を集めている」
としてメールが届いていたことが気になって仕方がないのだ。反射運動の消失、身体の異常な拘縮、仮面様顔貌、瞳孔の拡大、四肢先端に見られる震え……何かしらの脳症の一種だろうか? だが、その患者の共通点が理解出来ない。子供。しかも両親か又は片親を亡くしている。そして、発症している彼等はその亡き親を小声で呼んでいる。又は亡き親が「来た」と呟いている。それを一向に止めようとせず、ひたすら呟き続けていると言うではないか。それなら集団ヒステリーだろうか。ならば、彼らが一箇所に集った状態で共通のショックを与えるでもしないといけなくなる。発症した子供達の直接的な共通点は何もない。環境的要因だけだ。一体何が起こっているというのだ。
 
 メールが届いた。本来なら明日の朝にチェックするところだが、たまたま今PCを開いているので、メールを開いてみる。送信者は件の総合病院で心療内科をしている知人の男だ。

「本文: くろいもやがくるにげろ」
 
 何だ? 画面を睨む甲斐の眉間に皺が寄った。くろいもや? 黒い靄? 確か、一連の出来事で付いて回っている要素が「黒いもや」だ。



16 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 05:13:47
ID:Wry/OX7/PNo0162
私も見ているんです。黒いもやもや。あれ何なんですか? 私だけじゃないです。その時に談話室にいた職員でもう一人同じものを見ている人がいます。ただ、みんなじゃないんだけど。。。

17 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 06:01:23
ID:QVy/Zt88/31Psd7jp
だから、その黒いもやもやって何? 心霊写真に写ってたらヤバイっていう黒いアレ?

18 ..マジでヤバイ名無し:2012/07/03(土) 06:14:57
ID:Ydor885jDOS/71oA
それ、赤い光じゃなかった? あ、黒いのもあるんだっけ?



 一部の者の目に映る黒い靄。もやもや。そしてこのメール。こういう不可思議なことは甲斐にとっては嫌悪感の対象でしかない。そうしたことには必ず原因がある。脳が見せたり感じさせたりする「まやかし」のようなものだ。
 だが今回はその知人もそのまやかしを見たと言うのだろうか。しかもメールの文面は漢字への変換がされていなかった。くろいもやがくるにげろ。これは「黒い靄が来る。逃げろ」ということか。
 逃げろ?

 ふと甲斐は背後に気配を感じた。何気に後ろを振り向いてみる。そこには誰もいない。だが「何か」がいた。甲斐の背後に、自分を上から見下ろしているかのような黒い塊が月明かりに照らされ、異様な立ち姿を呈していた。甲斐は自分の口が唖然として開いていく感覚を感じていた。だが、そこからの記憶はない。恐らくは声を上げたかどうかさえ定かではない。
 黒いタールの塊のようなそれは、その全身で甲斐を頭から覆い被さり包み込んだ。
 デスク上にあるPCの電源が切れた。

 靄。霧。どうとでも表現は出来る。その漆黒の異物は流れる雲のように窓の桟の隙間から漏れ出し、街灯の明かりが点す路上へとその身を移していった。ドライアイスから立ち上る二酸化炭素の白蒸気が黒色になり、路面に流し落としたかのような様で、異物は対流しながら上方へと伸びていく。
 その傍にある電柱の影に一人の若者が立っていた。その男は異物が動く様子をじっと見つめている。靄状の異物はその場に凝縮し、深くフードを被って顔を隠すような体勢をとる「人物」のように姿を変えた。フードの下に渦巻く闇は眼球のない死人の如き表情を浮かび上がらせると、その空いた眼窩でじっとその若者を睨みつけた。男は細面の顎を下に引き、口を閉じたままで異物を睨み返している。
「来たか」
 異物は呟いた。その耳障りな声、いや声という音声ではなく、心に直に話し掛けてくるという感覚であろうか。テレパシーと世間で言われているようなものであろう。それでも実に不快で耳障りな音声が、耳から脳内へと駆け上がる感覚が若者を襲った。その若者は何も答えずに右手を握りこぶしの形で前に突き出す。手には剣が握られていた。
 若者は剣を構えると、顔を異物の真っ黒な穴のような眼窩から微塵も逸らさないまま、一気に異物へと突進した。全身に纏う金色の甲冑が街灯の白い光を受け、眩い照り返しを放つ。異物は身動き一つしなかった。剣が塊を上下二つに両断した。
 異物は二つになったままその場を漂っていたが、まもなく互いに引き寄せ合い、再び一つの集合体になった。

 まさか。あの者の剣が「消えない」。「闇」そして「絶対的な無」の権化である自分達に触れた剣が「消えない」とはどういうことか。異物は訝しげな思いに捉われた。あの剣は現世の物とは「組成物質」が異なる。そして現世の人間、生きる人間には生身の肉体がある。それに比べ、奴らは「思念体」なのだ。奴の肉体や身に纏う甲冑、あの剣も全てが「思念」によって構成されている。その「思念」の強さによって硬度が変化してくるのだ。自分達は「闇の神」「無の神」の先兵。このような「雑兵」一人の叶う相手ではない筈。
 あの者のほうが強き思いを持っているということなのか。だから自分の「力」が通じないのか。
 許せない。そんなことはあってはならない。

 シュナの振るう剣が再び異物を捉えた。生き物のようなしなやかで無駄のない動きが光沢を伴い、闇よりの使者へと向かっていく。
「消えろ」
 シュナは一言短く発した。異物はその体を霧のように四散させた。剣が傍に立っている電柱に当たり、火花が散った。
 火花? あの者の思念はこの世界の物質に直接的な影響を与えるのか? そこまでの力強さがあると言うのか。
 異物は初めて焦りを感じた。
 シュナは四散している黒き靄の正面を向いた。打撃は無効のようだ。剣で切り付けても、その辺に広がるなり散るなりするだけで、また一つに集まってくる。あれは何なのだろうか。伝承のセンチュリオンなのか。だが余計なことは考えていられない。切り込む隙を見付けなければ。「核」のようなものさえあれば叩き割ってやろう。捕食獣の如きシュナの鋭い眼光が異物を捉えたまま放さない。
 だがシュナと異物との交戦は、異物が上空へと舞い上がり、その姿を掻き消したことで、そのまま終結することになった。
 シュナは異物が泥汁の如く染み出してきた窓に目をやると、その身を翻し、中へと入っていった。現世にある建築物の窓も壁も、シュナにとっては無きに等しいものだ。壁を抜けると、倒れている一人の男の側に出た。屈んで男を頭から足元まで流すように一瞥する。心臓は動き全身を血液が流れている。だがその動きには力がない。肉体には何の傷もないが、この者の潜在意識、心、そうしたものが根こそぎ抜き出されている。男の目は開いたままだが焦点は定まっていない。いや、焦点さえもをこの両目は失っているかのようだ。口は薄く開き、しかし何の言葉も出ては来ない。
 間もなく甲斐の肉体そのものも動きを止めるだろう。

 シュナは無感情な視線を甲斐に落とすと、今ほど入ってきた窓を抜けて部屋を去った。

   ※ ※ ※ ※ ※

 様々な人の想い、人の念が怒涛の如く渦を巻き、その場一帯の空間を席巻している街。人工的なネオンの瞬く、まさに毒々しささえ併せ持つ光は、周辺に渦巻く闇と、ネオンとはまた異なる光とのマリアージュを透けてぎらぎらと放たれている。だがマリアージュと言うには些か趣きが異なる。あの闇と光は人の欲望であり、希望であり、未来を信じる心でもあり、絶望に喘ぎ苦しむ心。耳を劈(つんざ)く程の騒音と人の声がどうにも気分を不快にさせられる。慣れ親しんだ市場でのそれとはどうにも勝手が違うように感じてならない。
 新宿。不夜城。様々な人の往来が激しい中、どうにも違和感極まりない金色の甲冑を纏う長髪の女性が立っていた。目の前の建物はガラス張りで、その向こうには店舗の光が透けて外に漏れ、その上にある巨大な板が音と共に、着飾った人らしきものが動き歌う様子を映し出している。見慣れない文字が上下左右を目まぐるしく流れ、後ろでは何人もの男達が細く小さな紙巻き物を燃やしたものを手にしている。彼らは銘々にそれを口に運び、白煙を口から、あるいは鼻から吹き出している。あれは知っている。この世界にも煙草と言うものがあるのか。
 ヴィクセンはその場をしばらく動かず立っていた。その体を何人もの人物がすり抜けて行く。彼等には自分の姿は見えないようだ。だが、一部の者達がヴィクセンの姿を見つめ、怪訝な表情をしている。どうやらあれは、この世界に留まり続けている者なのだろう。この世界において既に肉体が死を遂げているにもかかわらず、未だにここに残り続けている。
「ヴィクセン!」 
 自分を呼ぶ声がした。振り向くと雑踏の中を悠々と歩いてトルソが近付いて来る。やはり数多くの人物がトルソの体をすり抜けて歩き去っていく。
「副隊長殿! ご無事でしたか」
 トルソは顎鬚を手でさすりながら「ああ」と返した。
「シュナはどうしたか知っているか? お前とは出会えたが、あいつとはまだ私も合流していないのだ」
「いえ、私もまだ」
「そうか」
 二人を包み込む様々な音にJR線の走り抜ける音が新たに加わった。多くの者達が待ち合わせに使うここ新宿フラッグス前にて、生者と同じように二人は再会したのだ。ポルタ・モルトゥスを抜けてからどれくらいの時間が経っていたかは二人にも分からない。
 だが急がなくてはならない。

「お訊きしても宜しいですか? 副隊長殿は確か……」
 ヴィクセンは隣に立つトルソに問うた。
「ああ、そうだ。私は天命を全うせず、現世の、ここの世界の記憶を残したままで転生した者だ」
 トルソはゆっくりと語った。
「だが、どうやら私がいた頃とは時代が違うようだ。ここも私のいた国ではない。恐らくはアジアと呼ばれていた地域のようだが」
「あじあ、ですか」
「お前は完全にゼロの状態で転生した者だから、そんなこと言われても夢物語でしか感じないであろう」
 ヴィクセンは小さく頭を下げ、申し訳ありませんと答える。
「謝るな。それより……あの光と闇の渦が見えるな?」
「はい」
 トルソは右腕を上げ、ガントレットをはめた指を伸ばし、新宿フラッグスの正面に伸びる階段からルミネへと抜ける横道、そして跨線橋の下へと指しつつ左から右へと動かしていった。
「あれが……生ける者の心に渦巻く光であり、そして闇だ。あの闇がセンチュリオンを支える心の闇である。あれはまるで大河の如く我々の世界に流れ込む。光もまた同様。その均衡が闇へ傾く時、我々の敵はその頭を持ち上げてくる」
 ヴィクセンは黙ってトルソの言葉に耳を傾けていた。
「急がねばならん。ヴィクセン、行こう」
 二人は街角に休ませていたグリフィスの元へ急いだ。見上げるほどの巨大な怪鳥もこの世界の者の目には映らないせいか、全く気にも掛けず、すぐ傍を歩き回っている。グリフィスはそれを興味ありげな様子で首を傾けながら、横切って行く者の顔を覗き込んでいた。
「行くよ、ハッチェス」
 ハッチェスと名付けられたグリフィスはヴィクセンを背中に乗せると、巨大な翼を広げ、夜空に悠然と舞い上がった。頭から伸びる触角のような器官を前と左右に動かしながら、敵の「気配」を感じ取ろうとしている。
 トルソの乗るグリフィスと上空で一緒になった。だが二羽のグリフィスはそれぞれ違う方向へその器官を伸ばし、低い唸り声を上げた。二羽は間違いなく何かしらに対して警戒している。
「ヴィクセンは西へ向かえ。私は東へ向かう。陽が昇ったら再びここで落ち合おう。いいな」
「御意」
 二人は別々の方向へ飛び去っていった。


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