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作品名:明日を目指して 作者:御等野亜紀

最終回   初恋っていくつくらいだった?
好き
両手でつぶやきを隠して言う
そのまま投げキッス
届け!


あ、振り向いた
一瞬だけどこっち向いた
あわたた
どうしよう
声聞こえちゃったかな
そんなはずないよね


「さっち行くよ〜
次理科実験準備しとかんとうるさいよ〜」
「はーい。いくいく待ってー。」私は倉谷幸子。何処にでもいるさちこ
名前の通り不幸もなく幸せな日々を
おくっている普通の女の子だけどこの理科実験は苦手

何かしでかさないかとひやひやもん
ぼんっ!
ほらきた何か
「そこ何してる触るな危ない先生が片付ける」
「フラスコだぞ少々煮立てても割れないはず」
「空になったら止めろと指示したろうが」
「だってさっちが四谷怪談の話始めて…ついつい」
「くーらーたーにー。そういうのは休み時間にしてくれ」
「はーい。すいません」
「沸いたから大丈夫だと思ったけど
空になるとはおもわなんだわ。ははははは」


笑いながら冷や汗をかく
「ところでさ煮立てた時の色の変化誰かめもった?」
しーん…
「隣言って聞いてくる」
「いい、いい。俺が行く。また余計な話になりかねない」


うーん。ちょっと訂正
かなりぼけた女子小学生っぽい
いやーでも四谷怪談うけたうけた
グループ全員聞き入ってたよ
しかし理科実験は失敗した
沸騰した色の変化を見なきゃだったのね…


「さっちさぁー告白せんの?
神崎君競争率高いよ」
「え、ええーでも小学生で恋人とか変じゃん」
「今時変じゃないとは思うけど
…友達になってくださいだけでもいいじゃん」
「そゆの言った方がいいのかな…だってうるさいじゃん
迷惑そう…」
「いつか言わなきゃただのすれ違う人だよ」
「そっかー」
「見てくれ悪いんだから
最初にダッシュかけなきゃ美人に負ける」
「そんなにブス?」
「いやごくふつーすぎ」
「相手が普通じゃない」
「う…。」
「みるっち、つきあってー放課後」
「お?その気になったか?そうでなくっちゃ」


……放課後……


「何も終るまで待たなくても呼び出せば?」
「邪魔はしたくないもん待つよ」
「つきあえない?」
「話聞かせてくれれば日が暮れてでもOK」
で二人でケラケラ笑いながら話してたわけ
2.3時間ってあっという間だね
「なにケラケラコートの入り口でしゃべってるんだよ」
「ごめんなさい邪魔になった?」
「気にはなるけどその程度で気を散らしたりはしないさ」

「で、何、神崎?」
「は、はい」
待つこと数分
「俺に用って…変り種の倉谷さん?だっけ」
「変り種はどうだか知らないけどたぶんこの子がその子です」
「で、何ずーっとケラケラ笑ってたけど値踏みでもされてたの俺?」
「そ、そんな失礼なことしません。桃太郎の話してただけで…」
「……桃太郎って笑えた?」
「さっちが話すと別の話になっちゃうの
きじも猿も犬もきび団子盗んでいっちゃってその度においかけっこだし
最後にひとつだけのこったきび団子は川に落としちゃうし
鬼は連れ帰って召使にしちゃうし…ね?」
「滅茶苦茶じゃんそれって。俺に用があるんだろうさっさと終らせようぜ」
「さっち帰ろう女の子の用事をさっさと終らせようなんて失礼だよ」
「ううん。迷惑承知で待ってたしそれこそ何回も同じこと繰り返し してきたのだろうし。
迷惑かけてごめんなさい。でも好きなんです
友達になってほしいんです。」
「ふーん。友達でいいのキスしてあげようかー。」
顔が急接近してくる
思わず顔をべちっと両手でさえぎる
突っ込んできた神崎は痛かったろう
「はは、変な奴好きでそれぐらいの覚悟もないわけ?」
「あ、そっか…ごめんなさい」
「謝ること無いさいいよおもしろいから友達なってやる」
「ほんと!ラッキーっっ!!」
「恋人はまた別の機会に話そう」
「うんうん。それでいい友達なれた嬉しいっっ」
「友達ならでそこまで喜んだの初めてだよ」と神埼も笑う
「それじゃ暗くなったからどっちか送ってやるよ」
同時に
「さっちを」
「みるっちを」
「せっかく友達なれたのだから」
「みるっちの家公園とかあってやばいじゃん」
じゃあジャンケン


「おーいたいたなんだってテニスコートなんかにいるんだ」
といきなり担任の声、顔が青ざめて声が震えてる
「倉谷、今すぐ市立病院に連れていってやるからすぐ車へ
詳しい話は中でする」
「先生私も」
「俺も一緒します」
先生は一瞬躊躇したがついてこいと言って駐車場にはしる
追いかけて乗り走る
「倉谷のお父さんがな仕事中に交通事故にあって今市立で
蘇生に懸命らしい上手くいけばだが30分以上救助にかかってるから
…覚悟しといてくれということらしい」
みるっちの手がぎゅうっと私の手をしめつける
「玉突きの2両目に居たらしいから車はぐしゃぐしゃだ」
「生きてるのが奇跡だと医師は言っていた」
「倉谷?大丈夫か?」
「大丈夫です。母と妹は祖母は祖父は?」
「皆、病院に向かっている」
「そうですか…」
病院につくともどかしい
先生が話している間にも叫んで探したい
先生がこっちだと言って連れられていく
そこはすでに霊安室だった…
祖母が近づくと思うとパチーン!と平手の一撃がきた
「こんな時にこんな時になにしとったんじゃお前は!」
「ごめんなさい。学校で遊んでた…」
「すいません。俺のせいです部活終るの待たせちゃったから」
母が「友達?」と聞く。みるっちは初対面じゃない
「はい。今は友達です。」と複雑な答えを返す
父のすでに青い顔を目にして倒れこむ
とぉちゃんとぉおちゃん目を開けてよ
帰ってきたよ学校から来たよ
溢れる涙硬くなった体をかるく叩く
5分前までは蘇生室にいたこと
つれられてきた時は99%蘇生不可能だったこと
泣きながら母の説明を聞いていた
それを無理言って蘇生してもらってたらしい
私がくるまではと
神崎が脇から両手をさしこみ
立たせる
「泣き止めさっち…幸子でいいのかな?」
もう誰もないてない
やれるだけの事はやったんだ
「ひとり泣けばまた悲しみがひろがる
ひとり笑えば笑いが広がる
一番お前が知っていることだ
立てシャンとしろ帰って来ない人より
生きている人に目を配れ」


そう言われて見回す
泣き晴れた顔をしてるが誰も泣いてない
苦しかったろう
どれぐらいの間苦しんでいたのだろう
でももう苦しくない
そうだねお父さん
「おばあちゃんごめんね。すぐ飛んでくれなくって」
一番辛いのはたぶんおばあちゃんだ
お母さんといっつも喧嘩してるけど
お父さんを取り合ってるようなもんだった
ひとりっこのお父さん大事に育てたんだ
「悪かったね。いいんだよ。お前が無事ならいいんだよ」
珍しくテニスコートなんかに居たから
見つからなかったんだね

時間は過ぎていく明日はいつもとなり合わせ


「お前って滅茶苦茶偏差値高いのな
もしかして学年10位には入ってない?」
「理科が悪いだけだよ5位にはいるよ」
「げ、マジ?」
「俺頑張っても公立のT学校だもんなぁ…
やっぱり推薦で市立のO学校かなー
「え?O学校狙えるの?」
「テニス推薦全国12位だぜ」 
「じゃあO学校にしない?
私も推薦で行けそう。制服かわいいしね。」
推薦ってあー学費かぁ…」
「母にばっかし負担もかけられないしね。
O学校なら勉強しなくても授業だけで
成績保てると思うし、そうすればバイトできるしね。」
「あーでも高校にならないと駄目かなー」
「俺ついていけねー教えろよな」
「いいよん。おしえるよー」
「みるっちとも相談だな。たぶんそこくらいだと思う。」
それか隣の女子中学校エスカレータ式のとこだね」
「ほんと仲いいのな。うらやましいことで。」
「すねない」
「すねてない。ただ脱線のが長いお前ら」
「あはは否定できないっっ」
「じゃあO学校の予定で猛勉強始めるよー」

 
母が働き出した
祖父も働き出した
中学は義務だから何処を出ようと行かなきゃならない
中卒じゃ職が限られちゃう
できれば高校までは行っておきたい
迷惑かけるけど学力落とさなければ推薦で高校もいけるはず
でないと妹が待っている。
学費考えると私も働かなきゃ大学だしてやれないでも生きている
家族が前より頑張っている
ひとりひとりが頑張っている
人が死んでも明日は来る
そして生きてれば頑張って過ごすしかない私の名前は幸子
そう名づけた親のためにも
幸せにならなきゃいけない
幸い私は家族にも友にも恵まれている
幸せになるぞーっと


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