ラジオは、65年前の今日、戦争が終わったことを 伝えた。
カルピスの氷が揺れている。
今時めずらしいであろう、軒先に腰掛けて 無造作に植えられた木や花や草を見つめる。
ひとりだった。 誰もいない。
ひとりで、かっこつけて ラジオだけをつけて、物思いに耽ってみていた。
久々の実家生活だ。
先週から、1ヶ月の長い夏休みをもらっていた。
師匠は、しばらく放浪の旅に出るらしい。 相当の変わり者だけど、生きる力はすさまじいから 金がなくても適当に働いて、ふらふらと移動を続けていくんだろう。
旅の間は仕事も受けないし、私が住み込みさせてもらってるスペースも 閉めるから、しばらく実家に帰りな、と言われて 仕方なく帰ってきた。
まあ、もう3年も帰ってきていなかったのだから ちょうどいい機会だったのかもしれない。
しばらくみないうちに、母は少しだけ小さくなり 少し、かわいくなっていた。 子供が巣立ってから、趣味や社会参加を始めたとは聞いていたが 大した規模ではないだろうと、思っていた。
甘かった。 母は、私が思っていたより、ずっと大胆な人だった。
いつの間にか、裁縫の技術がみるみる間に上達し 同時に、眠っていた美的センスが開花したらしく フリーマーケットでファンができるくらいの子供服をつくるようになっていた。
あんたもごろごろしてないで、好きなことやってみたら、だってさ。 つい4年前までごろごろしてたのは母さんのほうだったのに。何か、くやしい。
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