現在、日本は悪の組織が国家権力を握っている。組織の名前は「100パー党」。100%、パーな人間の集まりなので「100パー党」と呼ばれている。その組織のボスは、癌総理大臣。 我々はその癌総理大臣率いる100パー党を倒すべく、正義の戦隊を立ち上げたのである。
ある日、カッコイ議事堂で癌がにひひと笑った。癌は国民に嫌がらせをすることを生きがいとしている。このカッコイ議事堂というのも癌が考えた名前で、かつてここは国会議事堂と呼ばれていた。 しかし癌は「もっとカッコイイ名前がいいじょう〜」と駄々をこね、そのまんまの名前に改名させてしまったのである。 癌はまた企んだ。国民がどうやったら嫌がるかということを企んだ。そして企てた計画がこれだった。 「日本サクラガレ計画」。毎年毎年、日本は春になるとお花見をする。それが日本の習慣である。癌は思った。 「桜なんかつまらんじょ〜。それより僕ちんを見てじょ〜」。この超ワガママな発想により、癌は日本の桜を枯らす計画を打ち立てた。かくして癌率いる100パー党は桜を枯らす「カラシ」というチューブに入った薬を開発し、100パー党の関係者全員で、日本の桜一本一本にその「カラシ」を塗っていったのである。 100パー党は非常に疲れた。体力を消耗した。しかしそのおかげで日本の桜はひとつ残らず枯れてしまったのだ。 我々、正義の戦隊「国民レンジャー」はこの桜をまた咲かそうと、そして日本に春を取り戻そうと100パー党に立ち向かっていこうというのである。 しかしここでふとしたツッコミがあるかと思う。 「国民レンジャー」って何人戦隊なんだよ、と。いや、一応は言っておく。国民レンジャーは五人戦隊である。我々、国民レンジャーは国民を代表し、この100パー党と戦おうというのである。 ここで我々、国民レンジャーのメンバーを紹介するとしよう。まずはこの人、国民ピンク。ピンクから紹介するあたり、なにか違うと思うだろう?それはなぜか。 国民レンジャーの紅一点、国民ピンクはエジプトの娼婦であり、なにかにつけて我々に「エジプトイイトコロ。エジプトノキンスゴイ。ミンナシヌ」とエジプトの細菌兵器を自らの体に宿しているらしく、エジプトがいかにすごい武力国家であるかを誇示するのである。 だから我々国民レンジャーとしてはなるたけ彼女に近づきたくない。だからさっさと紹介してさっさと引っ込んでもらおうというわけである。 次に紹介するのは国民イエロー。また「なぜイエローなのだ」というツッコミが入るかもしれないが、これにもちゃんとしたわけがある。 イエローの得意技は車道側の信号が黄色になった時、猛スピードで横断歩道を通り抜けることである。ただ、車道の信号が黄色になった時は車も間に合わせようとそれ以上のスピードで突っ込んでくる。それに何回も何回もはねられている。はねられ飽きている。はれられることも積み重ねていくと飽きるのだ。 だから我々はそんなイエローに尊敬の念を表し、最も関わりたくない仲間、国民ピンクの次に紹介するのである。 さらに続いてのメンバーは、国民ブルー。ブルーは今、45歳の中年だが一度ピンクとなんだかんだあり、死ぬことが確定している。だからヤケになっている。一度、奈落の底に落ちるほど文字通りブルーになったらしいが、それが怒りに変換し、今では戦隊一100パー党を倒そうという気力に満ちている。ヤケの矛先がポジティブな方向に向かうと、まあこのようになる。 最後から二番目に紹介するのは、国民グリーン。グリーンは穏やかで極めて平和と自然を愛する性格である。だが今回、癌率いる100パー党は桜を枯らしてしまった。それにグリーンは猛烈に怒っている。つまりブルーとかぶっている。それが理由で戦隊の中では「二番煎じ」だの「パロディー」だのと陰口を叩かれている。 最後はおまたせした。この国民レンジャーのリーダーであり、もっとも正義感と勇気を持った男、わたくし国民レッドである。わたしの必殺技は癌総理大臣に打つべく、練習に練習をかさねた必殺パンチである。燃えるような、炎のようなパンチだ。 おっと、ここで「リーダーだけ普通なんだ」とか「工夫がないんだ」とか「結局打たずに終わるんだ」とか勝手なこと言わないでくれ。これでもリーダーなんだからひとりぐらい普通の人がいないと困るってもんだ。 と、いうわけで、わたしはメンバーのまとめ役なので、ここはノーマル路線を歩みたいのである。 かくして我々国民レンジャーは癌と100パー党を倒すべく、敵のアジト、カッコイ議事堂へと向かうのであった。
今は選挙の真っ只中。市会議員と県会議員の選挙である。当然、町には選挙カーがあふれていた。五色の戦隊服を身にまとった我々は基地で作戦を立てた。 「まず、イエロー。お前の出番だ」 「おれっちの出番っすか!?」 「そうだ。お前が重要な役割を担うことになるのだ」 わたしは不良の出来損ないのようなイエローに命じた。 「お前はどうせ、選挙に行かないだろう。だからだな。こういう作戦がいいと思うんだ」 メンバーはひとつに固まった。わたしはそのメンバーに向かってごにょごにょごにょと話し始めた。 「うわっかりました!それでいきましょう!!」 イエローは納得してくれたようだった。我々はまずイエローからの先制攻撃を開始した。
場所は東京のある横断歩道。そこにイエローをスタンバイさせる。選挙カーを待つのだ。 ここで皆さんにはだいたいの作戦が読めてきたと思う。そう。イエローには先ほども紹介した得意技があった。それをここでやろうというのだ。 案の定、向こうからはのろのろと、100パー党の選挙カーが近づいてくる。ただ選挙カーというものは黄色信号で猛スピードは出さないし、基本のろのろ運転だ。そこでさっきの作戦だった。イエローはわたしを見た。そして。 車道側の信号が黄色になった。近づいてきた100パー党の選挙カーはぴたりと止まった。そこへ! イエローは選挙カーの前輪の前に飛び出して行き横たわった。まずグリーンが呆れた。 「レッドさん、やっぱりあんなことしちゃあバレますよ。この作戦は無意味です。すぐに車から人が飛び出てきますよ」 わたしは言った。 「大丈夫だ。心配ない」 私には確信があった。イエローはその道のプロだ。いや、今まで一回も金はもらっていないが車にアタックしていくことに関してはわたしも一目置いている。そう。奴ならやってくれるはずだ。きっと。奴なら……。その時であった。 「100パーさん、がんばってえ〜」 おばさんである。我々の立つ後ろからおばさんが100パー党の選挙カーに声をかけ、手を振った。そしておばさんは選挙カーに乗っている立候補者アホ谷に握手を求めて車道までやってきた。 100パー党は歓喜した。このご時勢、100パー党を支持してくれる国民も珍しい。その声援に100パー党のアホ谷は身を乗り出した。握手をしようとおばさんのいるところまで手を伸ばそうとしている。 「ああん、ちょっと急ぐのよねえ〜。握手〜、握手したいけどもういいわ〜」 と、おばさんが議員に握手を求めるように手を伸ばしながら、手が届くもう少しのところでその場を去ろうとした。その瞬間、チャンスは訪れた。 ぐんんんんんんんに。 選挙カーが前進した。そしてその前輪は車の前へ横たわったイエローの腹の上で静止したのだ。 「イイイイイイイデデデデデデデデ!!」 イエローは叫んだ。しかし、まったく気づいてもらえなかった。かまわずおばさんは選挙カーにかけよった。 「きゃあー、うれしいですわあ〜。100パー党のアホ谷さんと握手ができるなんて〜。感激ですわあ〜」 おばさんはアホ谷の手を固く握った。 「ありがとうございます!光栄です!」 アホ谷はまんまるい顔に満面の笑顔を見せた。おばさんは喜んだ。 「今度の選挙、入れさせていだだきますわ」 「イイイイイイイダダダダダダダダ!!」 イエローは叫び続けた。いい仕事をしている。わたしは思った。こいつがメンバーでよかった。イエロー、わたしと握手をしてくれ!お前は今、輝いている!! わたしが思わずイエローにかけよった瞬間だった。おばさんがハっと気づいた。 「きゃあ!!」 「え?」 おばさんの叫びにアホ谷がクエスチョンマークを灯らせた。 「あなたの車、人を轢いてるじゃありませんか!!」 「な!なんですとーーーー!?」 我慢したかいがあった。ようやく気づいてもらえた。さあ、これは一大事だ。わたしは早速、この状況をごまかした。 「僕の友人が貧血で倒れてしまったんです。ところがそれにも関わらず、この選挙カーは僕の友人をあろうことか轢いてしまったのです!こんなことが許されていいのでしょうか!?」 「ちょっと早くどいてあげてよ!」 おばさんは議員に怒鳴った。 「あ、は、はい!!」 選挙カーはすぐにバックした。 ぐんんんんん〜〜〜。 イエローの腹の上から車がどいた。 「イエロー!大丈夫か!!この選挙カー、めちゃくちゃヒドイな!!」 「た、助けてアニキ……。おれっちもう……」 「イエロー!!イエロー!!」 「がく。」 アホ谷たちは車から降りて、わたしが抱きかかえるイエローを顔面蒼白で見ていた。そして言った。 「どうぞ、ご内密に!ご内密にいーーー!!」 おばさんは冷ややかな視線をアホ谷に向けた。 「新聞社に言ってやるわ。もちろん私は一票たりとも入れないから」 「がーん!」 おばさんは言い切った。そしてその場から去ってしまった。 アホ谷はわたしの手に500円を握らせた。 「これで勘弁してくれ!!」 とそれだけ言い残し、その場をまた去っていってしまった。
死んだフリをしていたイエローは言った。 「成功ですね。でも轢かれるのももう何回目だろ。いつもは当たってぶっ飛ばされるんですけど、今回は乗られるという轢かれ方だったんで新鮮でしたよ〜」 イエローは仕事を満喫したようだった。それを見ていた心配性のグリーンがまた言った。 「イエローさん、本当に大丈夫だったんですか?」 「ん?」 イエローは不思議そうな顔をした。 「だって、とっても痛そうだったから……」 すると、イエローは冷静にこう答えた。 「甘く見ちゃいけないよ、坊や。これは全て作戦だったんだ」 「作戦って言われても……」 グリーンはまだ納得しないようである。しかしイエローは続けた。 「さっきのおばさんいただろ?あれは仕込みなのさ」 「え?」 驚くわたしとグリーン。後ろでは出番はまだかと大人しく待っていたピンクやブルーも驚いていた。 「あのおばさんはおれっちが雇った仕事人だ。それと車に乗っていたアホ谷以外の奴。あいつらはおれっちのマブダチだ」 「ええ!?」 目を丸くしている全員にイエローは得意げに話し始めた。 「この作戦が決まった瞬間、おれっちはまず100パー党の選挙カーに乗ってバイトをしているダチにメールを送った。そしてここに現れるように支持した。それからそこへ、仕事を依頼したアンチ100パー党のおばさん登場ってわけだ。敵を騙すにはまず味方からってな。アニキ、皆……、言わなくて悪かった。これがおれっちの……、当たり屋の仕事なのさ」 「そうだったのかあーー!!」 全員が驚きの声を上げた上、グリーンはイエローに尊敬のまなざしを送った。 「轢かれたことには違いないですが、イエローさんはすごいですね!」 どうやら、グリーンのアニキはイエローになりそうだ。 我々の絆はこの作戦で深まった。今日の夕刊には『100パー党の選挙カー、男性を堂々と轢き続ける』と載るに違いない。そして我らはさらに敵を倒すべく、カッコイ議事堂へと向かうのであった!
ブルーの調子がおかしくなり始めたのは、イエローが敵にダメージを与えてからすぐのことだった。 「な、なんだか変だなあ〜」 ブルーは胸を押さえ始めた。 「ド、ドシタンデスカ?」 エジプトピンクはブルーに駆け寄った。 「ええい、お前は近寄んな!なんだか具合が悪いんだよ……。ちくしょう!カッコイ議事堂は目の前だっていうのに!!」 怒りをあらわにしたブルーの瞳は悔しさであふれていた。 「シッカリシテクダサイ!ダイジョウブデスカ!?」 ピンクはなおもブルーに近づこうとする。それを中年ブルーは追い払う。わたしはしゃがみこんだブルーの肩に手をかけた。 「どうしたのだ、こんな時に。ブルー、敵のアジトはもう目の前だぞ!」 そう言ったわたしの手の上にブルーがそっと手を置いた。 「悔しい。ワシは悔しいよ、リーダー。だけど……だけど……」 「だけど、なんだ?」 「エ○ズが発病したみたいだ……」 「な、なにいーー!!」 メンバーはのけぞった。しかし、すでにエ○ズを体に宿しているピンクはやはり、とうなだれた。そこからブルーとピンクの愛情物語が始まった。 「リーダー、ワシはもうダメだ。だがピンク、これだけはお前に伝えたいんだ。ワシらが出会ったのはそう。ワシが女房と別れ、一人エジプトに傷心旅行に行った時だった。ワシは見知らぬ土地の風に吹かれ、心を癒そうとした。そんな時、ピンク、君が声をかけてくれたな。『イッカイ、ハッピャクエン。イッカイ、タッタハッピャクエンヨ』。そう言った君は若く、そして輝いていた。ワシはそんな君に若かった妻を重ねた。そして誘われるまま宿に入った。そしてエ○ズになった。あっさりなった。『レンジで3分』ではないが、それはまるで、インスタントエ○ズだった。そんな僕を見て君は笑ったね。僕はあまりの情けなさに笑うしかなかった。そして君と手をつないで花畑で踊った。そして僕はそのまま帰国した。そしたらなんと、君も日本に来ていた。まさかの思いだった。僕は振り切ろうとした。降りかかる不幸を、君を振り切ろうとした。今の今までワシは君に冷たくしてしまった。でも発病した今、ワシは自分の気持ちに気づいたよ。ピンク、愛している。君を愛している。ワシはもう駄目だ。リーダー、みんな……。これからはピンクの住む日本に美しい花が咲き誇るように未来を取り戻してくれ……、頼む。頼んだ」 「ブルーサン、ワタシ、アナタガシンダラ、スグエジプトカエリマス」 「ぞ……、ガク。」 メンバーはピンクに冷たい視線を送った。 「ピンク、そういうことは今言わなくていいから」 「イエ、ダカラ、ワタシノコトハシンパイシナクテモイイトツタエヨウト。シカシ、ウラメニデマシタ」 「ほんとだな」 全員がうなずいた。そしてブルーを見た。 グリーンが言った。 「ブルーさん……」 イエローが言った。 「ブルーのダンナ……」 わたしはブルーを抱えた。 「ブ、ブルー……」 ピンクは言った。 「チーン、テカンジデスネ」 下ネタだった。 こうして我々は仲間を一人失った。ブルーは敵を討てなかった。その無念は痛いほど伝わってきた。我らはなおも一丸となった。そして目の前に立ちはだかるカッコイ議事堂に更なる敵意を燃やすのだった。
「誰だ、貴様たちは!」 カッコイ議事堂の警備員が我々を見た瞬間、大声を上げた。それもそうだ。我々の格好は正義の戦隊、国民レンジャーのコスチューム。いわゆるゴレ○ジャーのパクリと思ってもらっていい。そんな奴らがいきなり「たのもー!」とカッコイ議事堂に押しかけてきたのだ。不審に思うのも無理はない。 だが我々は不審に思われておおいに結構。わたしたちはこの議事堂を占拠する100パー党を倒しにやってきたのだから。 「我らはお前たち100パー党を倒しにきた!癌総理大臣はどこだ!奴を出せ!」 するとその騒ぎを聞きつけたある議員が顔を明るくさせた。 「お前たちはもしかして、噂に聞く国民レンジャーか!待っていたぞ!お前たち、100パー党を倒してくれ!」 野党の議員であった。それをキッカケにして野党の議員が我々の周りに集まってきた。それはもう大変な数だった。 「おい、国民レンジャーが来てくれたぞ!これで100パー党を倒せるんだ!」 この意外な味方の登場に我々は感激した。グリーンなんか目をうるうるさせている。 「まさか、こんなに僕たちを支持してくれている人たちがいるなんて。やっぱり今、日本はひとつの気持ちなんだ」 わたしはグリーンの肩に手を置いた。 「そのようだな。我々には味方がいた。これに応えようじゃないか」 「そうですね」 グリーンが言う。 「やったろうじゃん」 イエローが拳を握る。 「ヤリマスヨ、ガッツリ」 「お前が言うと、なんか別のことみたいだな」 わたしはピンクを見たが、ピンクのまなざしは真剣だ。ピンクはブルーの意思を継いだ。きっと口ではああ言っていても、きっと日本に残るに違いない。わたしは俄然やる気が出た。 「よっしゃあ、いくぞー!!お前たち、暴れまくってやれ〜!!」 わたしは同じく集まってきた100パー党の議員たちにエルボーを食らわせていった。イエローはそれを見て「ひゅう!」と口笛を吹いた。 イエローもお得意の突撃タックルで、100パー党をなぎ倒していっている。グリーンは一人一人、静かにこの世の平和について、目に涙をためながらじっくりと説得して回っている。グリーンの怒りは100パー党の一部の議員には通じるらしく、改心した議員も多かった。 ピンクの武器は色仕掛けであった。ブルーを口説いたそのフェロモンだ。100パー党のオヤジたちが引っかからないわけがなかった。オヤジたちは彼女にメロメロになった。彼女が歩く道はさっと開かれ、その脇には薔薇の花を一輪手にかざした馬鹿議員が片膝をついてピンクをうやまった。 我々は100パー党の雑魚をやっつけながら目的の部屋に到着した。 「ここが癌の部屋か……」 案内してくれた野党が我々の後ろで身構えている。 「よし!入るぞ!」 ガチャッ!! 扉は開かれた。そこにはアホズラをした癌が一人で仁王立ちしていた。 「ふぁっふぁっふぁ。ついにやってきたのだね、国民レンジャーの諸君。でも僕ちんはそう簡単には倒れないよーんだ」 わたしは癌に言った。 「お前はこの日本の桜を全て枯らした。その罪はここで償ってもらおう。さあ、わたしと一対一の勝負をしろ!」 わたしは癌に直接対決を申し出た。 イエローは「やっちゃえ、アニキ!」と高ぶっている。グリーンは桜の恨みをその瞳に宿して癌を睨みつけている。ピンクは「ウッフン」と言っている。 わたしは癌に歩み寄った。 「いくぞ、癌総理大臣!必殺パーンチ!スクリュー!!」 わたしは右手からうねるパンチを繰り出した。だがそれを癌はひらりとよけた。 「な、なぜだ!なぜ当たらない!?」 癌は異様なほど身が軽かった。スーツを着た癌はネクタイを右手でくいっと動かした。 「来なしゃい。君のパンチは見切っている」 わたしはまたパンチを繰り出した。しかし次も当たらない。なぜだ!!少し前、読者が「結局打たずに終わるんだ」とツッコんだのが本当になってしまうではないか! 「パンチパーンチ!!」 それでもひらりとよける癌。くそう、どうすればいい!そう思った時だった。後ろにいたピンクが一歩前に出てきた。 「リーダーサン、ココハワタシニマカセテクダサイ」 ピンクはわたしにこう言ったあと、癌の前に立ちはだかった。そこにはブルーの意思を継いだ背中がものすごいオーラを放っていた。 「ガンソウリダイジン。ドウデスカ?」 「どうですか、とは何かね??」 癌はほっぺたにくるくる模様を描いた漫画のキャラクターみたいな顔で不思議そうに尋ねた。そしてピンクはあのセリフを発した。 「イッカイ、パッピャクエン。イッカイ、ハッピャクエンヨ」 「な、なにい〜!?」 癌はうろたえた。後ずさりをする。ピンクはなおも癌に近寄った。 「イッカイ、タッタノハッピャクエン。タッタノハッピャクエンナンダヨ!!」 ゴーーーーーー!! ピンクのオーラは凄い!我々は後ずさった。そしてピンクは決めゼリフを言った。 「タッタノ、ハッピャクエンアルヨーーー!!」 「うわあああああーーーー!!」 癌はがくりと膝をついた。そして敗戦を認めた。 「分かったじょ。たった800円なんだにゃあ。じゃあお嬢さん、僕ちんと今からホ○ルに行くじょ〜」 わたしの目はきらりと光った。ここであった。 「必殺!必殺!必殺パーーーーンチ!!」 ドカーーーーーーー!!! 「げふうううーーーー!!」 こうして癌はこの戦に破れた。あえて言うならこの勝利は死んだブルーの魂のなせる技か。我々は手を取り合った。野党議員も大盛り上がりだった。これで日本に平和が戻った。100パー党は降参したからだ。 「やったな、お前たち。よくやった。お疲れさん」 「お疲れさまでした!!」 メンバーが声を揃えた。 「ところで」 わたしはグリーンのほうを向いた。 「最後の出番だ、グリーン。分かっているな。仕上げはお前に任せる。やってくれるな」 グリーンはこれからの大変さを悟ったように大きくうなずいて返事をした。 「はい」
ここからは僕、グリーンがレッドさんに変わって語らせてもらいます。語り手がいきなり変わって多少戸惑うかもしれないけれど。 そもそも僕たち、国民レンジャーが集ったのは自然な成り行きでした。まず100パー党に怒りを覚えたレッドさんが「求む!100パー党を倒す正義の戦隊メンバーを!」と言いまわっているのを近所に住む僕たちがぽつりぽつりと聞きつけ、国民レンジャーを結成したのです。 そこからは早かった。メンバーたちはお互い訓練を重ね、ついに100パー党に立ち向かう日が来たのです。 その時まではブルーさんは元気でした。現在の日本の現状にとても怒っていました。そして僕も「そうですよね!100パー党は許せません!」と続いて怒ったら、「怒り方にオリジナリティーがない」とか「もっと別の表現で怒りを表してほしい」だのと文句を言われ、口喧嘩になったりもしました。 だから僕の怒りは相手を説得するやり方に変わったのです。それがカッコイ議事堂で功を奏し、たくさんの100パー党を改心させることができました。 そしてここで皆さんが一番気になっていることは何か。もちろん、僕の最後の使命です。 僕は100パー党が日本中の桜に塗っていった「カラシ」を一本一本取っていくつもりです。日本の桜が元気に咲く日はまだ遠い。本当の春はまだやってきていないのです。 僕はこれから南は沖縄から北は北海道まで、カラシを取る作業を始めていくつもりです。もしどこかで僕を見たら「がんばってね」と温かい声援を送ってほしい。もちろん、中にはまだ100パー党を信じている人もいて、罵声を浴びせられることもあるだろうけど。 さあ、では出発しましょうか。これから長い旅が始まります。 あ、ところでピンクさんはどうなったか気になる方いらっしゃいますか?彼女は日本に残るそうです。ふるさとのエジプトには「海外旅行」という感覚で出かけていけばいいと言っていました。 ちなみにリーダーのレッドさんとイエローさんは恋人募集中です。最近二人の中に、ピンクさんに対する淡い感情が芽生えているとかいないとか。 え?僕ですか?僕の恋人は桜です。桜が咲いていれば、それだけで僕は心が満たされます。というのは嘘なので、誰かいい人見つからないかなあと実は思っていたりします。すいません、恥ずかしいのでつい嘘をついてしまいました。 ではでは皆さん、またどこかでお会いしましょう。 いつかまた日本の桜が枯れた時には、誰かれともなく集まって正義の戦隊国民レンジャーを結成するでしょう。 それでは最後にメンバーから一言ずつ皆さんに伝言です。 「リーダーのレッドだ。みんな!元気だせよ!」 「イエローっす!日本の特攻はおれっちにまかせてくれよ!」 「エジプトピンクデス。イッカイハッピャクエンヨ!」 そして亡くなったブルーさんから。 「ワシのように、死んだ時後悔せずに生きろよ!」 「いいお花見ができるようがんばります!グリーンでした!」
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