私たちに語りかけるメッセージ。例えば、髪のひと揺れ、風の囁き、光の温もり、草花の葉ずれ、その全てにメッセージは潜んでいる。五感を鋭敏にすることで一つ一つのメッセージを感じ取り、魂でそれらを感じ、融合することでその意味が明らかになるのである。
我々人に与えられた時間は、連鎖連関しており、限られた時間の中で身の回りに溢れるメッセージを紐解かなくてはならない。それが、私たちに与えられた「生きる」ということに繋がる。 劇間の休憩、人々のざわめきの中、ふと今まで、ブルーのチケットをずっと握り締めていたことに気づいた。
「千年前のラブストーリー」というタイトルを眺める。チケットの裏面に目を向けると「真実の愛を見つけるのは誰?」というメッセージの他にTime To Timeの文字がイタリック文字で刻まれている。墓の前にあったチケットの「−TO−」を思い出させる。我々は時の流れの中にある旅人なのだろうか、使い古された言葉だが、しみじみと心に響き渡るタイムトゥータイムの文字に手が汗ばむのを感じた。 場内に二部開演のベルの音が響き渡った。
灯りが落とされ、再び、ストーリーテラーにスポットがあてられた。その光線の中にいるのは先ほどの老紳士とは違っていた。二人の女性の姿が光の中に、映し出された。一人は、髪をポニーテールに束ねた二十歳位のブルーの瞳が映える、若く・美しく、しかも、若さの中にも重厚な年輪を感じさせる品性の整った女性。そして、もう一人は、私の記憶に新しい女性である。昨夜の老女・真理の姿がそこにあった。舞台上にある彼女は、昨夜同様スポットに照らされとても輝きを放って目に飛び込んできた。
私は再び動悸が早くなってくることを感じた。何故自分がその場にいるのかさえ、考える余裕も無く、ただ、導かれているというとしか思いようも無く座席の肘掛を無意識に、汗ばんだ手で強く握っていた。
真理の声は、会場に優しく語り始めた。
「皆様、今日ここにお集まりいただいたことにも意味のあることをお分かりいただいているでしょうか?先にストーリーをご紹介した紀野純次は、仁錘帝。そして、私の隣にいる美しい女性がユリ・ユージン、あの時代は仁瞑有と呼ばれていました。現在は私の孫としてここに存在しております。私、マリ・ユージンは、遊磨里。この舞台でご紹介しているタイムキーパーなのです。皆様にはとても信じがたいことかもしれませんが、神に誓って申し上げます。この物語は事実にもとづいたお話なのです。
人は時として、真実に直面しても、それがあまりにも衝撃的であったり、論理的でないと本当には、心の底から受け止めることさえできなくなるものです。私がこうして、ここでお話していることすら演出の一つと感じておられることでしょう。タイムキーパーの役割は、理解していただくことではないのです。ただ、ありのままをあるがままに伝える。それが、タイムキーパーとしての私たちから皆さんへのメッセージなのです。 魂という言葉について、皆さんは考えたことがきっとおありでしょう。そのことにどう思おうとも魂は存在するということを受け入れてください。それだけでもきっと心豊に生きる事ができるでしょう。
ここで皆さんに魂(ソウル)についてほんの少しではありますが、お伝えいたしましょう。人の人格とは、一体どのようなものなのでしょうか?一人に一人格が備わっていると皆さんはお考えでしょうか?答えはNONなのです。人の人としての人格は、一人で成り立っているものではありません。どんな人でも、一人では決して人には成り得ないのです。魂(ソウル)のかけら、それが、私たちの血の中に埋もれていると言ったほうがよいでしょう。魂は、肉体と同じように分離と融合を繰り返します。私の魂は、私単独にアルわけではではないのです。一人のソウルとは、例えば、一部のお話に登場した、四人のフレンズの構成する魂の一つとしてアルのです。すなわち私たち四人で一つの魂、ソウルをつくっているということなのです。どんなに素晴らしい功績を残した人格者であっても必ずその影には支えてくれる人が存在します。それが、俗にいうソウルメイト、一つの魂の構成員なのです。その分離した魂の一片に出会うことこそ皆さんの人生を豊かにすることに繋がるのです」
彼女はそう言うと、傍らのユリに優しく微笑みかけた。
ユリは、その微笑を受け、柔らかな声で真理に続いた。
「第二部では、皆さんにソウルの存在を感じていただきたいと思います。それは、とても涼やかで心地よい世界をご体験いただけると確信しております。そして、このストーリーを通じ、より多くのソウルが覚醒することを心から願っております。」
ユリがそう話し終わると、場内の灯りがいっせいに落とされた。真っ暗な中、先ほどの四人の声だけが耳に伝わってくる。(暗闇の中の舞台が始まった)
|
|