20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:路地裏の猫と私 残影編 作者:じゅんしろう

最終回   9
 X
桜の花が街を彩り、我が路地裏にも草木が茂ったころ、ごん太の彼女の腹はいよいよ膨らみが目立つようになってきた。ごん太の彼女への愛情は見ていて微笑ましい限りである。私がさしだす餌にすぐ飛びつくこともなく、彼女がその餌を食べに来るまで待つ。彼女が食べ始めると、そうっと離れ側に控える。それも彼女の食べる様子を見ることはせず、別の方角に顔を向ける。まるでマナーを心得ている紳士のようである。もっとも、相変わらず毛はぼさぼさで薄汚いが。猫にもいろいろな性格のあることは承知していたが、私の経験からしても、このようなノラ猫は見たことがない。この前、ごん太にも春が来たのだなあ、と思ったが、こうまで優しさを見せ続けるとは正直思わなかった。こうなると人情として、良い子猫が生まれてほしいものだと願ってしまう。ごん太のように優しい性格の子猫を。そして、親子仲良く過ごしている光景を目にしたいものだとも願う。ノラ猫のための、我が路地裏の再興を思い描いて。


← 前の回  ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2307