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作品名:路地裏の猫と私 残影編 作者:じゅんしろう

第8回   8
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新しいノートパソコンを買った。今まで愛用していたパソコンが、モニターも真っ暗になり、うんともすんとも反応しなくなって、わずか三年で壊れてしまったからである。いや、壊した、といった方がより正確であろう。すべては私の無理な使い方によるところが大きな要因であろうと考えられるからだ。が、それもいいかっこしい、とのそしりを免れないだろう。ありていにいえば、パソコンに無知そのものの私が、出鱈目な使い方を押しとおし続けたことが重大な要因と思われる。可哀想に、そのパソコンは力尽き、ついに壊れてしまった、というところが真相であろう。
あろうとは、まだ、すこしはパソコン側に罪を着せたいという気持ちが見え隠れしている。素直に私の非を認めたくないのは、大きな散財を強いられるからである。すこしでも精神的な負担を軽くしたい私は、未練たらしく、パソコン側のあら探しを続けたという次第だ。当然、修理をすることも考えたが、このパソコンは通信販売で通常の電器屋では取り扱ってはいず、そのメーカーに修理にだせば相当の費用がかかるというので止めた。
ということで、妻の冷笑に耐えながら、ともかくも最新鋭機(私にとってはという意味であるが)のノートパソコンを買った。 すると少し欲が出た。今度は壊したくない。私の年齢を勘案すると、これが最後のパソコンといえなくもない。したがって、注意深く慎重に使用して長寿をまつとうさせるため、その仕様書の類を何冊かを買った。すこし鼻息を荒くし、やる気満々というところだ。さらにそれだけでは駄目である、とも思った。我がパソコンを内側から飾りたいとも考え、一念発起して、また散財しデジタルカメラなるものを買ったのだ。さっそく、私の心をとらえて離さないごん太を写真にとり、苦心惨澹の末、目出度くもそれをデスクトップの背景に取り込むことに成功した。そのため何と長い時間を費やしたことか。
ともかくも、私にとっては快挙だ。写真撮影のテクニックにおいてはおそろしく下手で話にならないものではあるが。これからさらに腕を上げ、もっとよいノラ猫の被写体を追い求めるため、のこのことあちらこちらに、出かけようと決意した。それを無謀にもインターネットに投稿することも本気で考えた。新しいものを手に入れるということは、人をいささか興奮させるもののようだ、この年になっても。


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