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作品名:明武谷村の女房たち 作者:じゅんしろう

第22回   22
それらをまとめてみれば、静はまず旦那の市蔵を説き伏せ、並吉と好子の結婚を認めさせたということだ。はじめ、市蔵は烈火のごとく怒鳴ったが、静は一歩も引かなかった。あくまでも反対するなら、好子ともども私も家を出る、とまで言ったそうだ。これには、市蔵は大弱りでたちまち折れたということだ。選挙に負けたあとだけに、弱気になっているらしい。次に静は、堂々と好子を引き連れ、中山貞吉の家に乗り込んでいったという。
そこで、並吉と好子はすでに割りない仲になっている、好子は一人娘であり、並吉さんは次男であるから、竹本の家に婿養子として入っていただきたい、と申し込んだそうだ。これには、貞吉も烈火のごとく怒り、八百年間反目している家に、大事な息子を婿養子などにやれるかと、怒鳴ったという。そのとき静は、いつまで、源平合戦の真似事をし続けるつもりですか、と言い、では、あなたの顔を立てて、養子のことは撤回しますが、単に婿として来ていただきたい、と、凛とした態度で言ったという。静の切り返しに、貞吉はなにも言えなくなってしまった。そのとき、貞吉の女房のふみが、初めて口を開き、もう、あんたの負けよ、静さんの申し出を受けましょう、と駄目だしをしたということだ。そのとき貞吉は女房を睨みつけようとして顔を向けたが、おとなしいだけの女房だと思っていたのに、今まで見たこともないような冷たい目を貞吉に向けたので、貞吉はたちまち俯いてしまったという。貞吉も市蔵と同様な心理状態のようだ。こうして、並吉と好子は結婚を認められた。
トキは、この話しを聞いて、静はすごいと思った。今まで、人には見せたことがない、本当の自分の姿を示して、意志を貫き、思いどおりにしてしまったのだから。たぶん、貞吉の女房とも連携を取ったであろうことは、容易に想像できた。
それから、秋祭りも無事終えたころ、その静から電話があった。


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