人間というものは凄いもので、ひとつ良い考えを思いつくと、湧きあがるように、次々と考えが浮かんできた。何か考え付くたびに、トキ自身が興奮で顔が上気したようになったほどだ。 やがて、トキは考えをまとめ終えると、ふーつ、と息を吐き、固唾を呑むようにして、トキを見つめていた三人の顔を眺め回し、まかせなさい、と一言言ったことだった。 それから、トキは三人に自分の計画を説明し、ふきに、ともかくも一晩だけ、二人を匿うようにと指示した。それから、ふきの家を出た後、トミの家に行き、さらには、一人暮らしをしている或る老婆の家に行って、話し込んだ。自分の家に帰りついたときは、かなり遅くなっていた。それから、シゲとヨシの家に電話をし、明日の朝に家まで来てくれるように頼み込んだ。幸いにも、弥吉が帰ったのはその後だったので、トキが家を留守にしていたことはばれることはなかった。弥吉の話によれば、やはり、並吉が姿を消したことは知られていて、貞吉の家は大騒ぎになり、家のものが探し回っているとのことだ。両家とも、選挙前のスキャンダルはご法度である。地団駄を踏んでいる顔が目に浮び、内心ほくそ笑んだトキだったが、ふーん、と言っただけで、知らぬふりをした。 次の朝、トキたちは無人販売の打ち合わせと称して販売所の前に集まり、トキが、昨夜の経緯と計画を打ち明けた。シゲとヨシは初め驚いたようだったが、トキの話しを聞くうちに、ニヤニヤしてみたり、あの助平和尚の奴、などと言葉を発したり、最後は二人とも計画に加わることを承諾したことだった。
|
|