X 六回におよぶ抗がん剤治療は、予想してたとはいえ最悪だった。 人それぞそ副作用が違うと聞いていたが、私の場合は吐き気と酷い食欲不振だった。いざ自分が当事者になってみると、その辛さは想像以上だった。 抗がん剤を点滴されると、すぐに頭のてっぺんがなにかに掴まれたように感じ重たくなった。さらには頭が熱を帯びたようになり、胸がむかっいた。 体力をつけるため、何とか食べようとするのであるが、目の前に食事のお盆が置かれると、途端に食欲がなくなり、その気力もなくなった。わずかに、林檎などの果物類を一口、二口食べることができただけだ。妻がいろいろと私の口に合いそうなものを用意してくれたが、無理して食べてもすぐに吐いた。綿貫医師が見かねて、栄養剤を点滴してくれてた。そうやって治療期間を凌いだ。そのため状態により、クールの期間を延ばしてもらったりした。 一回につき、四日間の入院であるが、退院し食欲が回復したころに次のクールに入る。毎回同じだった。いや、だんだんひどくなり、クールを一時止めたほどた。最後のクールのときは、病院に行く道で、この後のことを想像しただけで吐いたほどた。 二度と抗がん剤治療はごめんだと思ったが、ただひとつ、幸いなことに髪の毛が抜けることはなかった。 治療を終えたときは、山の稜線が緑鮮やかな初夏になっていた。 後は、癌の再発や移転するかどうか、注意して生活していかなければならない。定期的に病院で診察をし、薬を飲み続ける。 といって、そのほかのことは今までと変わりがない。また、今までどうりの生活を送るだけである。 残りの人生意を考えた場合、ものは考えようだといえないだろうか。これまでとは違って、時間というものを大切にしていくようになるだろう。 寝たきりというのは困るが、私の場合はさいわいにも、ほかの内臓とかの障害は無い。普段通りの生活ができる。 年とともに、もののあわれを感じ、よく涙することがある。これからはさらにもう一歩踏み込んだ、ものの見方ができるかもしれない、と考えたりした。
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