V このところ夜中に隣の家で何やらごとごとと物音がする。どうやら、どこか入り口を見つけて、猫が住み着いているようだ。 五匹の子猫が路地裏に現れてから十日たったある日の朝、不意にという感じで新参の子猫が三匹現れた。先の五匹と比べると一回り小さい。 ヨモ模様が二匹と茶のまだら模様が一匹である。三匹だけかと思っていたら、どこからか、にゃあにゃあと鳴き声がする。隣の家の玄関をみると、白と黒模様の子猫が曇りガラスの戸に体をはりつけ、外に出ようともがいていた。どうやら一匹だけ取り残されたようだ。そうしていると、スネ子がその家の隙間に入っていき、その玄関の中に姿を見せ、まもなくその子猫を口に咥えて出てきた。やはりスネ子が母親だったのである。 私がその子猫を見たとき、昨年、漫画のノラクロとそっくりだったチビが現れたかと思った。無論、そのようなことはあり得ないことであるが、瓜二つでチビの再来かと思わせた。おもわずチビのときのように、すくい上げようとしたら、チビ二世は素早く逃げた。性質は全然違うようだ。少し離れたところから大きな目をいっぱいに見開いて、私の様子を窺がっている。その目はきょろきょろと動き、あのスフィンクスのような落ちつきはなかった。 他猫の空似かと、ひとり合点してその場を離れた。が、また昨年のような賑わいを取り戻したことになる、どのような展開になるか楽しみである。
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